老人ホームやデイサービスさんで、音楽ボランティア活動をするようになってから10年近く経ちます。初めて伺った際には、どのような曲が喜んでもらえるのかよくわからず、いろいろと失敗しながら試行錯誤してきました。
良かれと思って準備していった曲が全く受けなかったり、逆にこんなチャラチャラした曲は非難ごうごうかも、とビクビクしてたらすごいノッていただけたりとか・・。
一般に昭和の懐メロがいい、とよく言われていますが、一口に「昭和懐メロ」といってもかなり幅があります。それこそ、昭和一桁代から昭和50年代までたくさんの曲があります。さらに、実際にボランティア活動を行う人達の年代によって、それぞれが持っている懐メロのイメージや定義も大きく変わります。
【年代により変わる懐メロの定義(レコード?カセット?CD?)】
私の青春時代はフォークソングやニューミュージックが全盛でしたが、その当時の曲を特養ホームの80~90代の人達に持っていっても、たとえ大ヒット曲でもまったく的はずれです。
実際に、施設のスタッフさんから以下のような話をよく聞きます。
「若いボランティアの人たちは、一生懸命考えて古い歌を用意してきてくれてありがたいのですが、施設利用者さんにとってはそれでも最新ヒット曲になってしまうことがよくあります(笑)」
また、ボランティアに伺う高齢者施設さんの種類によっても少し事情が変わります。例えば、介護の度合いが高く認知症の方の割合が多い特養ホームさんと、比較的元気な人が多いデイサービスさんでは、利用者さんの平均年齢が5~10歳程度ずれてきます。
特養ホームさんであまり受けなかった曲が、デイサービスさんでは受けが良いこともよくあります。また、年代に関係なく好まれ、一緒に歌える曲ももちろんあります。例えば、
・大スターや、大物演歌歌手の曲(美空ひばりさんとか)
・誰でも知ってる歌い継がれているヒット曲
共通する原則は、「一緒に歌える」「一緒に口ずさめる」です。演者だけが歌いまくる一方通行では、いくら素晴らしい曲でもここではやる価値はあまりありません。自己満足曲では、利用者さんにそんなに喜んでもらえないからです。
さて、実際に私が友人のN君と一緒に初めてボランティアに伺ったのは、「特養」と呼ばれる特別養護老人ホームさんでした。たぶん入居者の年齢層は80歳代がメインだろう、という前提で実際の選曲をしました。
【どんな曲を選べばいいのか悩む】
80歳の方々が10~20代の青春時代といえば、60~70年前の曲です(これを書いているのは2019年8月)。1930~1940年代の曲、つまり昭和10~20年代または30年代にかけての曲になります。ただ、その時代の曲となると、私もN君も全く知らないかあまりよく知らない曲ばかりです。
そこで、知らない曲はYOUTUBEで聞いて覚えました。そして、最終的にリストアップした曲のセットリストの概要はこんな感じです。(時間は1時間です)
誰でも知っている唱歌:2~3曲
昭和10~30年代のヒット曲5~6曲
昭和40~50年代の大御所のヒット曲:1~2曲
リクエスト曲:希望曲を言ってもらう
こんなリストで数年間繰り返しトライすると、必然的に外せない定番曲や季節の曲なども決まってきます。そして毎回新しい曲を持っていって、受けるか受けないかを試します。
たまに、自分たちがやってみたい曲を合間に挟むこともありますが、オリジナル曲はやりません。知らない曲を聞かされる利用者さんはまったく面白くもないでしょう。
そして、選曲や構成・MCがバッチリいったときはとても喜んでもらえます。
「また来てね、今度はいつ?」
「死ぬ前に懐かしい歌一緒に歌えてよかった!」
「感動しました、涙出ました」
「サインしてください(笑)」
など、どちらかと言えば私達のほうがうれしくなります。他人のために行ったボランティアが、結局は自分に跳ね返ってきていることを実感した、初めての老人ホーム訪問だったのです。