私が老人ホームなどの高齢者施設で、ボランティア活動を定期的に行うようになったのは2011年ころからです。このボランティアは、施設の利用者さんと一緒に「みんなで歌いましょう!」というものです。
もともと、友人のN君と趣味のギターで好きな歌をいっしょに歌っていたことがきっかけです。当時、N君のおばあさんが老人ホームに入所していたことから、偶然そこで音楽ボランティア活動をさせていただくことになったのです。
【初めて行った老人ホームでのボランティア↓】
音楽活動と言っても、なにも私達の演奏や歌を聴いて感動してもらおう、というような大層なものではありません。そもそも、私はギターも歌もからっきし下手くそだったからです。しかも、人前で歌ったこともない。聴かせる腕はまったくありません。
下手くそであるからこそ「ちゃんと練習していかないと失礼だ」と私は焦っていました。ただ、N君はかなりギターも歌もうまかったので少しは気が楽でした。さらに、N君は予備校の講師をやっていたので、人前で話したりコミュニケーションしたりすることにも慣れていました。とりあえず彼についていくだけ、という感じです。
N君と二人でスタジオを予約し、選曲や進行などの打ち合わせに1日と、リハーサルに1日をかけました。その他にも、歌詞カードの作成や音曲機器の準備(マイクやアンプスピーカーなど)をしました。
【打ち合わせと練習風景↓】
ボランティア当日は、ホーム入所者の方やデイサービスに来ていた方々など約50人が集まってくださいました。初めての経験だった私は、うまくやらないといけないとかなり緊張していましたが、N君が主導で演奏もMCも引っ張ってくれました。また、施設のスタッフさんがとても協力的だったので、結果的には大成功でした。
いわゆる懐メロを中心に約12~13曲みんなで歌いました。涙を流して喜んでくれたり、終わってから握手を求められたり、「次はいつ来てくれるの?」と言っていただいたり、逆にコチラが幸せな気分にさせてもらいました。
施設のスタッフさんや入所者さんからは、
「若い人たちもボランティアに来てくれるが、選曲がマッチしない(若い人にとっては精一杯古い歌のつもりだが)」
「演奏や歌を披露するだけのボランティアもいるが、入所者さんが参加できず残念」
「カラオケは待ってくれないが、あなたたちは歌のスピードに合わせてくれる」
「懐かしい歌を歌えてとても幸せな気分になれました、ありがとう」
というような声を頂きました。
結果的に、私達の演奏や歌がうまいとか下手とかはまったく関係なく、ただみんないっしょに歌って楽しみたいんだ、ということがよくわかったのです。
【みんな歌いたい↓】
あとで知ったことですが、こうした老人ホーム(特に特養)にいる人達は、安全確保のためなかなか外出も自由にできないそうです。そんな中、やはり期待されていることは「非日常」です。
初めてこの施設にボランティアに伺ってから早10年近く経ちます。その間、いろいろな施設さんにボランティをさせていただきましたが、この期待されている原則はどこへ行っても変わりません。
自分がどう思われるかの「自分矢印」より、いかにして利用者さんの心を豊かにしてあげられるかという「相手矢印」が、ボランティアにとってはとても大切なことだということを、常に勉強させていただいています。