親族が亡くなった際、その後の一連の法事・法要で、お坊さんにお布施(おふせ:謝礼・寄付のこと)を渡す機会も増えてきます。ただ、お布施は「どのような袋を用い、どのように表書きや裏書きを書けばいいのかよくわからない」という声をよく聞きます。
昔のように、お坊さんとの深いお付き合いが少なくなってきたり、親が亡くなったりして、誰に聞けばよいのかわからない人も多いからです。
また、身内の法事・法要は、月参りなどの定期供養を除き、多くの人にとってそれほど多く経験する行事ではありません。そうしたことから、お坊さんへ渡すお布施袋の書き方や渡し方の作法についても、未経験の人も多いのです。
【お坊さんにお布施袋を渡しているところの例↓】
ただ、そうした場合でもあまり神経質になって心配する必要はありません。法事・法要で使用するお布施袋については、「適した袋の選び方」「表・裏面の正しい書き方」の最低限のマナーを知っていれば、問題ありません。初めてでも、お坊さんとの関係を良好に保て、法要を進めることができます。
今回は、法事・法要で、「お坊さんに渡す、お布施袋の選び方や書き方のマナー」について解説します。
1、お布施袋はどんなものを使えばいいのか?
1-1、お布施の本来の目的とは?
お布施の一番の目的は、お坊さんへの感謝とお礼を伝えることです。また、実質お布施とは寺院への寄付金であり、檀家(だんか)さんが属する檀那(だんな)寺を経済的にサポートすることを意味します。
一方、仏教的には信者であるあなたが欲を差し出す「修行」のひとつとされています。修行のため財産を差し出して、我欲を捨てることがもともとのお布施の意味です。そのため、お布施は本来あまり形式にこだわった、仰々しく豪華な袋である必要はありません。
また、葬儀やお通夜などの弔事で遺族に渡す御香典や御仏前とは意味合いが違います。お布施は遺族に対するお悔やみの金品ではありません。したがって、原則的には水引のついた不祝儀袋を使わなくてもよいとされています。逆に簡易な袋を使用したからといって、お坊さんに対して失礼になることはほとんどありません。
ただ、現実には、仏事の種類や地域・宗派の違いなどにより、お布施袋にもいろいろなタイプのものが使用されています。お布施袋のタイプや中袋の有無などによって、若干書き方も違ってきます。以下ではそのお布施袋の4つのタイプについてみていきます。
【お布施袋のいろいろなタイプ↓】
1-2、お布施袋の4つの種類
お坊さんにお渡しするお布施袋には大きく以下の4つのタイプがあります。それぞれ地域や宗派また、仏事の種類によって使われ方が違います。あなたの状況に適したお布施のタイプを選びます。ただ、どんな仏事でも共通して使えるお布施袋もあるので、あまり神経質になる必要はありません。
タイプ1:水引なしの無地に「御布施」と書かれたお布施袋
タイプ1のお布施袋は、水引が付いておらず「御布施」と印刷された市販の袋です。または、無地の封筒に自分で「御布施」と墨で書いてもかまいません。いずれも水引はなしです。このタイプはどのような仏事でも使える万能お布施袋です。どんなお布施袋がよいか迷ったらこのタイプ1を選べば問題ありません。
安価な単純封筒タイプのものと、少し高級感があって見栄えのする、折って使用する多当折りタイプ(中袋付き)のものがあります。多当折りタイプの中にも、無地のものと装飾柄付きのものがあります。
【水引なしのお布施袋の例①(単純封筒タイプ)↓】
【水引なしのお布施袋の例②(無地、多当折りタイプ、中袋付き)↓】
【水引なしのお布施袋の例③(装飾柄入り、多当折りタイプ、中袋付き)↓】
単純封筒タイプのお布施袋は、数千円から1~2万円程度までを包む場合に適しています。また、多当折りタイプのお布施袋は、3万円~10万円以上を包む場合に適しています。無地より装飾柄付きのほうが少し高級感があります。
こうしたタイプ1のお布施袋は、宗派を問わずあらゆる仏事で使えますので最も無難です。私はいつもこのタイプ1のお布施袋を使っています。アマゾンや楽天で注文すれば翌日届くので便利です。
ただ、地域によってはあるいは宗派によっては、水引のついた不祝儀袋を使う場合もあり、次に解説します。
タイプ2:黒白の水引がついた不祝儀袋
黒白の水引がついた不祝儀袋は、一般的には通夜・葬儀での香典や、その後の仏事での遺族への御仏前を包む際に用います。また、地域によっては次の写真のように、お布施を包む際に用いられることがあります。
【黒白の水引がついたお布施袋の例↓】
ただ、お布施袋として使う場合は四十九日までの場合(いわゆる弔事)が多く、それ以降の仏事には、タイプ1の【水引なしの無地封筒に「御布施」と書かれたお布施袋】を使うほうが無難でしょう。
あなたが檀家さんであれば、檀那寺のお坊さんに一度確認してみると安心です。檀家さんでない場合は、タイプ1のお布施袋で問題ありません。
タイプ3:黃白の水引がついた不祝儀袋
黃白の水引がついた不祝儀袋は主に関西地方で用いられます。一周忌以降の仏事で、遺族に渡す御仏前を包む場合や、お坊さんに渡すお布施袋として用いられることが多いです。
【黄白の水引がついたお布施袋の例↓】
ただ、こうした黄白の水引がついた袋を使用するのは一周忌からで、四十九日までは黒白の不祝儀袋を使用するのが一般的です。
したがって関西エリアでお坊さんにお布施を渡す際は、
・一周忌以降の仏事⇒黄白のお布施袋
・すべての仏事に共通⇒水引なしの無地封筒に「御布施」と書かれたお布施袋
がよいでしょう。私の実家は大阪なので、かつて法事の時はこうした黄白のお布施袋を使っていた記憶がありますが、現在では水引なしの袋を使用しています。
宗派により違いがあり心配な人は、檀那寺のお坊さんや実際にお布施を渡す予定のお坊さんに一度確認してみるのが確実です。
お坊さんに聞けなかったり、どうしたらよいか迷ったりしたら、タイプ1の水引なしのお布施袋を選んでおけば無難です。
タイプ4:双銀の水引がついた不祝儀袋
双銀(銀色×銀色)の水引がついた不祝儀袋は、黒白の水引の袋と同じように、一般的には通夜・葬儀での香典や、その後の仏事での遺族に渡す御仏前を包む際に用います。地域により、お坊さんに渡すお布施や戒名料を包む際にも用いられることがあります。
【双銀の水引がついたお布施袋の例↓】
黒白の袋との主な違いは、双銀の袋は比較的包む金額が多い場合(5万円~数十万円)に用いられることが多いです。寺院の格式が高くお布施金額も相当料を要求される場合などは、このタイプ4の双銀の水引がついたお布施袋を使用する例が多いです。
金額がそれほど高額でない場合(5万円以下)は、先述のタイプ1~3を使用します。
なお、浄土真宗の一部では、仏壇を買ったときの入仏供養と、お墓を作った時の供養で使用するお布施袋には、紅白の水引のついたお布施袋を渡す場合もあります。浄土真宗の人は、そうした法要の際、一度菩提寺に確認してみることをお勧めします。
次に、お布施袋の書き方について解説します。
2、お布施袋の書き方、お金を入れる向き
2-1、お布施の表面の書き方
お布施袋の表書きですが、どのタイプのお布施袋でも共通して、漢字で上部に「御布施」と書きます。または、市販の「御布施」と印刷されたお布施袋を使用します。お布施以外に、交通費であるお車料や、宴席代であるお膳料を渡す場合は、それぞれ「御車料」「御膳料」と記してください。
そして、それぞれの袋の下部には、「名字のみ(例:鈴木)」または「フルネーム(例:鈴木一郎)」と書きます。サイト管理人の私であればこんな感じです↓
【お布施袋の表面の書き方例①(苗字のみ)↓】
【お布施袋の表面の書き方例②(フルネーム)↓】
【御車料、御膳料などの書き方例↓】
2-2、お布施の裏面の書き方(中袋がない場合)
裏面ですが、お布施袋に中袋がついている場合とついていない場合で書き方が若干変わります。
中袋のない単純封筒タイプのお布施袋の場合は、裏面に、「住所、氏名、電話番号、金額」を書いておけば、よりていねいです。
お布施はお坊さんに対する労働対価ではありませんので、本来は金額を書く必要はないとされています。しかし、寺院の記録や経理・税務上、「書いてあった方が都合がよい」とお坊さんから聞きます。そのため、書いておいたほうがより親切です。
なお、省略する場合は、住所などは書かずに金額のみでもオッケーです。
【封筒タイプのお布施袋の裏面記入例↓】
2-3、お布施の中袋の書き方(多当折りタイプの場合)
単純封筒タイプではなく、包むタイプである多当折りのお布施袋には、通常、中袋がセットになっています。こうしたタイプの場合は、外包みの裏面ではなく中袋に書きます。中袋の一般的な書き方は、表面に金額、裏面に住所・氏名・電話番号などを書きます。
【中袋の表面の書き方例↓】
【中袋の裏面の書き方例↓】
なお、中袋を上包みに包んで入れる向きは、中袋・上包みそれぞれの表面・裏面が同じ向きになるように揃えて包みます。次の写真のようになります。
【中袋を上包みに入れる向き(表面)↓】
【中袋を上包みに入れる向き(裏面)↓】
2-4、漢数字の書き方
金額は算用数字(1、2、3)ではなく、以下に示すような漢数字(壱、弐、参)で書きます。さらに数字の頭に「金~」、最後に「~圓也」を入れます。
▶使用する漢数字:壱、弐、参、四、伍、六、七、八、九、拾、百、阡、萬
▶単位:圓
記入例
5,000円⇒金伍阡圓也
10,000円⇒金壱萬圓也
30,000円⇒金参萬圓也
35,000円⇒金参萬伍阡圓也
50,000円⇒金伍萬圓也、または金五萬圓也
100,000円⇒金壱拾萬圓也
【金額の記入例↓】
2-5、筆の選び方
なお、お布施袋の表書きは、できるだけ毛筆で書きます。そして、うす墨(薄い墨)ではなく濃墨(普通の真っ黒な墨)を使用します。
葬儀などお悔やみ事・弔事では、親族に渡すお香典はうす墨で書く習慣があります。ただ、お坊さんに渡す、お悔やみ事でないお礼としてのお布施は、普通の真っ黒な墨で問題ありません。
葬儀など急な弔事では、墨をゆっくり磨る時間がなく、薄い墨のまま急いで書いて駆けつける、ということが薄墨の由来です。したがって、お布施は、お坊さんに対してしっかり準備しましたということを示すために濃墨が良いとされています。
このときに使用する筆は、市販の筆ペンが便利です。なお、筆ペンには濃墨用とうす墨用があるので間違えないようにしてください。最近は、サインペンの感覚で書ける筆ペンもあります。
ちなみに、だんだんと薄墨の習慣はなくなっているようです。地域によっては濃い墨のお香典でも作法違反ではないとされているようです。
【うす墨と濃墨の例↓】
【いろいろな筆ペンの例↓】
2-6、お札(お金)の入れ方
使用する紙幣に関しては、お布施の場合、古いお札ではなく新札を使用します。
葬儀でのお香典などでは、古いお札を使ったり、新札にわざわざ折り目を入れたりして使用します。これは「不幸に対してあらかじめ新札を準備している」という失礼を避けるためです。
その一方で、お布施はあらかじめ準備しておくものなので、新札を用意するようにします。
なお、袋にお金を入れる向きですが、お布施袋の表面に肖像画(=福沢諭吉さん)がくるように入れます。お香典とは反対の向きになるので注意してください。
【お金を入れる向き(封筒タイプ)↓】
【お金を入れる向き(中袋の場合)↓】
まとめますと、多当折りタイプのお布施の「お金・中袋・上包み」の、それぞれの包む向きは次の写真のようになります。
【お金・中袋・上包みの向き】
また、上包みの包み方は、もともとお布施袋を購入した時に折ってあった包み方をそのまま再現すればオッケーです。通常は、裏面が上から重ねるようになる仏事用の包み方になっています。
【裏面の重ね方↓】
以上、「お布施袋の選び方・書き方マナー」を解説しました。お坊さんへの感謝とお礼を伝えることが、お布施の目的ですので、あまり形式張ったマナーに気を使うより、感謝の気持ちを込めることのほうが大切です。
お布施袋のおすすめ10選はコチラ⇒https://reset-soul.com/useful/ofusefukuro-10sen
なお、お布施を渡すときは一般に「切手盆(きってぼん)」というものを使いますが、これについては以下のリンク記事に詳細を解説しています。
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