日本では、超高齢化と核家族化がますます進み、お墓やその供養のあり方・考え方が、2000年代に入ってからずいぶんと変化してきています。
そうしたなか、お墓や仏壇を持たない人や、また、お墓や仏壇があっても継承者がいない人のための、新しい供養代行サービスの総称が「永代供養」といわれる方法です。
少子高齢化によって、お墓や仏壇・位牌などを引き継いで、その後の供養や法要等の面倒を見てくれる継承者がいない人も増えています。また、「子どもにお墓や仏壇・位牌など、後々の面倒を見させたくない」と希望する人も意外と多いのです。
「永代供養」とは、このような場合に、子どもや親族に成り代わり継続的に供養を行ってもらえる、とても合理的なシステムです。「永代供養」の対象になるものは、お墓・位牌・仏像・戒名などいろいろあります。そのうち、お墓すなわち、遺骨の納骨とその後の供養・管理を対象としたものを、「永代供養墓」といいます。
「永代供養墓」は、大きく分けて4つのタイプがあります。今回はこの「永代供養墓の4タイプ」について、それぞれのメリット・デメリットについて説明します。
そもそも永代供養とは?
永代供養の意味
現在、一般に呼ばれている永代供養とは、子どもなどの継承者がいなくても、代わりに管理者が、永続的に管理や供養をしてくれる代行システムのことをいいます。
この場合の管理者とは、寺院や霊園になります。また、霊園は運営主体が、公営も民間もあります。いずれにしても、自分や跡継ぎになり代わり、運営者やお坊さんなどが永続的に供養・管理をしてくれるのです。
ところで、永代供養の「供養」とは、もともと仏教用語です。昔のインドで使われていたサンスクリット語の「尊敬・崇拝」という単語を、日本語に訳したものが「供養」です。仏や父母・先祖に対し、お供え物を提供し資養したり、冥福を祈ったりする行為全般をいいます。
【お墓参りで先祖供養】
古代インドでは、お供え物をすることが、神々や死者を養うという思想がありました。また、日本でも昔から、神々や死者に食料を捧げるという文化・習慣があります。これらが組み合わさって、現在のようなお供え物をして先祖を供養するという文化ができたのです。
したがって、供養とはひらたくいうなら、「ご先祖様にお供え物をし、手を合わせて感謝し、冥福を祈る」ということです。これを永続的に代行して行なってもらえるシステムが、永代供養です。
永代供養の対象とは?
ところで、永代供養の対象となるものとは何でしょう?一般的に永代供養とは、お墓(遺骨)のみを対象としているように思われがちです。ただ実際は、日常、私たちが手を合わせ拝んでいるもの、つまり供養しているものすべてが対象になります。
たとえばお墓以外であれば、すぐに思い浮かぶのは、仏壇や位牌などです。多くの寺院では、位牌や仏像なども永代供養の対象として預けることができます。また、供養の対象物を何も持たなくても、生前名や戒名などで永代供養を受け付けてもらえる寺院もあります。
【位牌も永代供養の対象】
ただ、一般に永代供養といえば「永代供養墓」をイメージすることが多いため、「遺骨を納骨したあと、代わりに永続的に供養してもらえること」と解釈する人が多いのが現実です。
永代供養墓の4つのタイプと特徴
遺骨は、法律で許可を受けた墓地以外のところに埋蔵することができません。墓地以外のところに遺骨を埋めれば、たとえ自分が所有する自宅の庭であっても法律違反で罪に問われます。
とはいえ、お墓をあらたに建てても、面倒を見る継承者がいなければ困ります。また、もともと先祖代々のお墓がある人でも、継承者がいなければ供養や管理をしてくれるものが誰もいなくなり、将来的に放置状態になる恐れがあります。
このような場合に最適なお墓が「永代供養墓」です。自分でお墓を個別に持たなくても、遺骨を埋蔵でき、管理もしてもらえる方法です。「永代管理墓」とも呼ばれます。代行管理をしてもらえるお墓ともいえます。
このように、継承するものがいなくても、代わりに管理者が永続的に管理や供養をしてくれる墓の新形態「永代供養墓」には大きく以下の4つのタイプがあります。
1、他人の遺骨と一緒に納める「合祀墓(ごうしぼ)」
2、屋内施設の「納骨堂」
3、仲間と一緒に入る「共同墓」
4、一般の墓と同じ「個別墓」
それでは、ひとつずつ見ていきましょう。
タイプ1:他人の遺骨と一緒に納める「合祀墓(ごうしぼ)」
「合祀墓(ごうしぼ)」とは、1つのお墓、1つの墓標のもとに、他人の遺骨と一緒に納骨をするお墓の形態です。「合同墓」ともいいます。この合祀墓タイプを利用すれば、自分で個別に墓を立てる必要がありません。
たとえば、一般のお墓が一戸建てとするなら、合祀墓は共同生活をしている、会社や学校の寮のようなイメージです。
【合同墓の例:観音様を墓標とした合同墓】
最近では、遺骨をゆうパックで送る「送骨(そうこつ)」によって、合同墓に納骨し、その後の管理や永代供養をしてもらえる霊園も増えてきました。
▶合同墓・合祀墓のメリット・デメリット
合同墓・合祀墓のメリットは、経済的負担が非常に小さいことです。個別に一般的なお墓を建てるにはかなりの費用がかかります。墓地永代使用料・墓石代・工事費・管理料などを合わせて、全国平均で約200万円というのが相場です。
家族が亡くなったからといって、ぱっと決めてすぐに買えるほど安価なものではありません。
それに比べて、合祀墓は、個人的にお墓を建てる必要がないので、費用は数万円~数十万円程度です。
「送骨による永代供養」ですと、3万円程度で済む霊園もあります。とにかく安く済ませたい人に適した納骨方法です。また、雑草処理などの墓廻りのメンテナンスや管理が不要です。
一方デメリットは、他人と一緒に埋蔵されているので、お墓参り自体はできますが、個別の墓にお参りができないことです。また、まったく赤の他人の遺骨と一緒に埋蔵されているため、感情的に受け付けない人には向きません。
さらに、のちのち取り出したり、分骨したりすることもできません。また、霊園によっては年間管理料などが必要なところもあり、申込みの際には注意や確認が必要です。
タイプ2:屋内施設の「納骨堂」
2つ目は、納骨堂に納める方法です。これは法律上、「埋蔵」ではなく、「収蔵(しゅうぞう)」といいます。つまり、遺骨をお墓に埋めずに、納骨堂という施設に収めるのです。「預かり保管」してもらうことになります。
つまり、納骨堂とは、遺骨を預かってもらって安置するための、お墓に替わる代替施設です。許可を受けた施設であれば、墓地でなくても法律上は問題ありあせん。
もともと納骨堂は、お墓を建てるまでの遺骨の一時預り施設でしたが、現在では、おもに都市部における代替墓の役割を果しています。一時施設ではなく、恒久施設の位置づけです。一般のお墓を一戸建てに例えるなら、納骨堂はマンションのような集合住宅のイメージです。
【納骨堂はマンションのイメージ】
遺骨の納め方などによって、納骨堂の種類は大きく5タイプに別れます。ロッカー式、棚式、仏壇式、墓石式、自動搬送式などです。それぞれのタイプに長所短所がありますので、実際に現地を見て確認することが必要です。
▶納骨堂のメリット・デメリット
納骨堂のメリットは、墓石を購入するよりも安く、承継者がいなくても購入できることです。また、先の合祀墓と同じく、雑草処理など後々のメンテナンスが不要です。
ただデメリットとして、納骨堂は収蔵期間に、一定の年数が規程されている場合が多ようです。では、一定期間が終われば遺骨はどうなるのか?と、心配になるところですが、最終的には遺骨を取り出し合葬してもらえます。つまり、最後は先程述べた合祀墓に埋蔵されます。
その他、デメリットといえるかどうかは考え方次第ですが、お墓参りの風情がないところかもしれません。納骨堂という施設に参るのですから、お墓参りというより、施設参りになります。
タイプ3:仲間と一緒に入る「共同墓」
3つ目は、共同墓に納める方法です。「合祀墓」や「合同墓」ではなく「共同墓」です。これは、生前から「家族や親族などの地縁や血縁を超えたつながり」で、お墓に対する考え方が同じ仲間同士が連携し、一緒に入るお墓のことです。
合祀墓は赤の他人と一緒に入りますが、共同墓は仲間と一緒に入ります。合祀墓が寮なら、共同墓は、最初から知り合い同士で住むシェアハウスといったところです。
【シェアハウス】
イメージの違いをまとめると以下のようになります。
一般のお墓・・・一戸建て
合祀墓・合同墓・・・寮
納骨堂・・・マンション
共同墓・・・シェアハウス
共同墓は、NPO法人などが会員を募り、家族に代わりこのNPOが共同で墓を建て、遺骨を守っていくというシステムになっています。残った仲間が助け合って永代供養をしていくシステムです。
企業、団体、老人ホームなどの高齢者施設などが、この共同墓を保有している場合が多いです。会員や仲間が、生前からパーティーや旅行などを通じ親睦を深めていきます。そして、共同墓に入ったあとは、親族ではなく仲間がお参りをして見守っていくのです。
▶共同墓のメリット・デメリット
共同墓のメリットは、いわゆる「おひとりさま」向きだということです。配偶者やこどもなどの継承者のいない人が、生前から仲間作りができること、そしてその仲間と一緒にお墓に入れる安心感が最大のメリットです。
デメリットは、このNPO法人や企業、団体、老人ホームなどの高齢者施設などが解散してしまったあと、仲間で遺骨を見守るシステムが崩壊してしまうことです。お墓そのものがなくなることはないのですが、少しさみしい気がします。
タイプ4:一般の墓と同じ「個別墓」
一般のお墓と同じ個別墓で永代供養をしてもらえるタイプです。見た目は一般のお墓ですが、管理や供養を永続的に行ってもらえます。
【個別墓】
メリットは、一般のお墓と同じように個別にお参りができること、デメリットは費用が高くつくことです。永代供養は、面倒を見てもらえる継承者がいない場合の利用がほとんどなので、このような個別墓は、経済的に余裕のある人以外はあまり意味がないかもしれません。
今回は、「永代供養墓4つのタイプと選び方」について説明しました。いずれにしても、あとで後悔しないよう、またのちのちトラブルが起きないよう、まずは自分の希望や意志を明確にした上で、家族や親族と充分な話し合いをして、みなさん了承の上で進めることが大切です。