いざその時にあわてないために・・
部屋の片隅で誰にも看取られることなく、ひっそりとこの世を去る孤独死。その遺体は数日から数週間放置され、腐敗が進みます。
通常まず遭遇することのない状況ですが、家族や関係者、また賃貸住宅であれば管理会社や大家さんは否応なく対応しなければなりません。
日本社会の超高齢化に伴い、孤独死の発生数は年々増える一方です。ただ、多くの人は、そのことをニュースなどで知ってはいるものの、普段は他人事と考えています。というより、自分の周りでそのような状況が起こることを考えたくないだけかもしれません。
しかし、そのときは突然やってきます。そして、いざその場面に遭遇した場合、どうしたらよいのかわからず、あわててしまいます。その間にも、耐え切れないほどの腐敗臭が漂い、ウジが湧きハエが飛び回り、近隣から苦情が殺到します。集合住宅の場合、隣室や同フロアーの方が、「気持ち悪い」と言って退居や引っ越しをしてしまう場合もあります。
【近隣苦情が多いマンション】
ただ、あまり心配する必要はありません。孤独死を発見した場合には、以下の「慌てないための初期対応と、その後の対策マニュアル」を参考にしてください。
このマニュアルは、孤独死の発生が最も多いワンルームマンションを想定しています。発見時の初期対応から緊急対策方法、その後の室内処理(消臭・殺菌や現状回復)、近隣クレームや噂への対応まで順を追って具体的な対策をまとめたものです。
今回は、そのうち「孤独死を発見したら最初にすること:慌てないための初期対応」について解説します。
孤独死の発見状況2パターン
発見した場合、どのような状態かを確認する
孤独死が発見されるきっかけの多くは、死後何日か経過して(夏場で3日以上、冬場で1週間以上)近隣居住者が異臭(腐敗臭)に気づき始めることです。住民から管理会社・大家さんなどに連絡されて初めて発見される場合がほとんどです。
一方、自宅の風呂場などで意識を失っている状態を、家族が早期に発見する場合もあります。「体は温かいけど息をしているかどうかわからない」場合などです。
【風呂場で発見される場合も多い】
このように孤独死または、孤独死の疑いがある状況を発見した場合、まずは生死の判断を自分なりにしなければなりません。この判断によって、初期の対応が変わってきます。1つ目が「生死の判断がつかない場合」、2つ目が「死亡が明らかな場合」です。
それぞれの状況別に初期対応を見ていきましょう。
孤独死を発見したら、最初にすること:状況別の初期対応
1、生死の判断がつかない場合の初期対応
早期発見で外見に著しい変化がみられないなど、生死を判断することが難しいケースがあります。生きているのか死んでいるのかハッキリとわからないなら、当然まず119番、救急車です。救急隊員が到着し、息がある場合はすぐに病院へ搬送されます。
【まずは119番、救急車】
また、「事件」の可能性があると判断された場合は、通常救急隊員から警察へ連絡がされます。現状保存のまま警察の到着を待ち、その後は指示に従います。
2、死亡が明らかな場合の初期対応
異臭がする、ウジ・ハエが発生しているなど、死亡が明らかな場合は、①警察 ②ご家族(保証人)の順に連絡をします。孤独死は、たとえ明らかに病死や自然死であったとしても、初期段階では「異常死」として扱われるため、必ず警察へ届け出なければなりません。
【警察へ届け出】
孤独死において警察が行うのは、強盗・殺人などの事件性があるかないかの調査です。現場状況の聞き取りなどで、ご家族や管理会社・大家さんも立ち会いを余儀なくされるケースが多いです。
警察による現場検証中は、原則として室内に立ち入ることはできません。遺体の検案などを経て事件性がないと判断されて、初めて第三者の入室が可能になります。
ご家族や保証人と連絡が取れる場合は、この間に、今後のことについて打ち合わせが必要です。今後のこととは、
1、室内に残された荷物の整理や搬出はどうするのか?
2、原状回復(部屋の消臭や、害虫駆除など)と、その費用負担についてどうするか?
になります。
通常、遺体はいったん警察の車で搬出され、遺体安置所で保管されますが、最終的にはご遺族が引き取らなければなりません。身寄りがない方や、保証人・親族と連絡が取れない場合は、管理会社や大家さんが対応せざるを得ません。
なお、事件性がない場合は通常1~2日で遺体の検案・搬出が終わり、入室可能となります。その後の、真っ先に行うべき緊急対策(腐敗臭とハエの拡散防止)については、以下の記事に続きをまとめました↓