「仏壇の魂抜き(たましいぬき)を、お坊さんにしていただくのですが、仏滅や友引の日にすることは問題ないですか?」と言う質問をよくいただきます。
魂抜きは、祝いごとでもないし、また弔事でもないので、いつ行えばいいのかわからない人も多いと思います。
【カレンダーの六曜】
魂抜きとは、仏壇の整理処分や墓仕舞いなどで必要になってくる仏教儀式の一つです。お性根抜き(おしょうねぬき)・閉眼供養(へいがんくよう)とも言います。
仏壇やお墓は、そこに宿っているご先祖様の魂・霊を抜いてから、処分や改修・移動をしなければならないとされています。魂抜き・お性根抜きをするのは、そのような理由があるからです。
このような仏教儀式である魂抜き・お性根抜きの日取りは、「仏滅」「友引」「大安」など「六曜(ろくよう)」と呼ばれるものの内、いったいいつ行えばよいのでしょうか?またいつ行なってはいけないのでしょうか?
ここでは「六曜」の歴史と意味を踏まえた上で、魂抜き・お性根抜きに最も適した「日取りの決め方」をお伝えします。
そもそも「六曜」ってなに?
結婚式は「大安(たいあん)」がよい、葬儀は「友引(ともびき)」を避けて「仏滅(ぶつめつ)」がよい。多くの方は、昔からの慣習として、さまざまな行事で、そのような日取りの決め方をしています。
カレンダーを見ていただくと、数字の下に、「大安」や「友引」をはじめ、「仏滅」「先勝」「先負」「赤口」などと書かれている場合がほとんどです。これが「六曜(ろくよう)」と呼ばれているものです。六種類あるので「六曜」です。
【カレンダーの六曜】
「六曜」は大昔の中国で生まれた、その日の吉凶や運勢を占う思想で、14世紀ころに日本に伝わったと言われています。また、起源はよくわかっていません。ただ、私たち日本人はあまり深く考えずに、この「六曜」の縁起をかつぐ習慣があります。
私自身も普段は、この六曜ほとんど気になりませんが、大きな行事などでは少し気になってしまいます。六曜は漢字で書かれているので、なんとなく意味がわかった気になるところが、縁起をかついでしまう理由の一つかもしれません。
さて、「六曜」は原則として次の順番でカレンダーを廻っています。
① 先勝(せんしょう・さきがち)
② 友引(ともびき)
③ 先負(せんぷ・さきまけ)
④ 仏滅(ぶつめつ)
⑤ 大安(たいあん)
⑥ 赤口(しゃっこう・せきぐち)
原則、この順番で規則的に回ります。ただ、カレンダーを見ていただくとわかりますが、ある日突然この順番が途切れて、別のところから新たにスタートしている場合があります。
例えば、
①先勝→②友引→③先負と来て、次は④仏滅となるところ、急に⑤大安になったりするのです。
これは旧暦(太陰暦)での毎月1日の六曜が決まっていて、そこから再スタートしているからなのです。今は太陽暦なので、月の途中でこの周期が変わってしまうのです。
旧暦はお月様の周期で決まっています。お月様の引力が、地球や人体に及ぼす影響はとても大きいので、「人の運勢もお月様の周期に左右される」という昔の人の経験則が、六曜のベースにあるのかもしれません。
このように考えると、「六曜」はあながち迷信であるともいえませんし、またある意味、科学的であるとも言えます。
「六曜」のそれぞれ6つの意味
それでは「六曜」をひとつひとつ順番に見ていきます。
① 先勝(せんしょう・さきがち)
「せんしょう」とも「さきがち」とも読みます。「先んずれば勝つ」と言う意味で、急いでやれば吉、早くやれば吉、後回しはダメ、ということです。「早起きは三文の徳」と同じような意味にも取れます。
つまり、午前中が吉で午後は凶です。大安ほど吉ではないが、午前中なら大安にも勝るとも劣らないのが先勝です。
② 友引(ともびき)
「ともびき」と読みます。文字通り「友を引く」、つまり「親しい友達を呼び寄せる」と言う解釈をされていて、葬儀などの弔事・凶事をこの友引に行うと、友人をあの世に引っ張っていくので縁起が悪いとされています。
この後に出てくる「仏滅」もそうですが、この「友引」も、もともとの漢字が今とは違います。「友引」はもともと「共引」と表記されていたそうで、つまり共に引き分けで、勝負がつかない日という意味です。
この日に勝負事を行なっても決着がつかないので、やめておいたほうが良い日になります。
現在では、この日に葬儀をするのは一般的には避ける方が多いのが現実です。気にしない方にしてみれば、逆手に取って、葬儀費用が安くて済む、利用価値のある日になります。
③ 先負(せんぷ・さきまけ)
「せんぷ」とか「さきまけ」と読みます。先んずれば負けで、先勝とは逆の意味です。あまり急いでとりかからずに、熟考し、準備万端整えてからスタートするのがよい日です。
午前中は凶なのでじっくり計画して行動せず、午後は吉で行動を起こします。なおこの「先負」の日は、できるだけ勝負事を避けます。勝負ごとは、先手必勝で「先勝」の方がよいかもしれません。
④ 仏滅(ぶつめつ)
「ぶつめつ」と読みます。仏滅は「仏さんが滅びる」と書くので、とても縁起が悪い凶日とされています。祝い事は避ける場合が多いです。なにか新しいことを始めるに当っても、この仏滅を避ける人もいます。
しかし、「仏滅」はもともと「物滅」と表記したそうです。つまり、過去の苦しみや不都合な物が滅び、新しく何かが始まる、というような解釈もあります。
仏が滅びる、と言われたら、なにか仏教と関係があるのかと思いそうですが、実は仏教とはまったく関係ありません。
仏教は、紀元前にインドで生まれ奈良時代に日本に伝わっています。仏教伝来から何百年もあとに伝わった六曜の「物滅」に、誰かが仏の字を当てはめて「仏滅」となり、縁起の悪い日になってしまいました。
実際は、仏さまが亡くなったから縁起が悪いのではなく、この「六曜」の運勢で、たまたま「仏滅」のもとである「物滅」が、凶日になっているだけのことです。
最近は、気にする人も減ってきたとはいえ、やはり縁起をかついで、お祝いごとに仏滅は避ける方が多いのが現実です。
⑤ 大安(たいあん)
大安は「たいあん」と読みます。「大いに安し」ということですが、スーパーの安売りではなく、大変安らかであるという意味です。つまり、何事を行なってもたいへん安らかに、万事うまくいって成功するという日です。
六曜の中ではもっとも良い日なので、結婚式・結納・引っ越し・地鎮祭・その他お祝いごとに、多くの人はこの大安の日を選びます。これを逆手に取って、結婚式場を大安以外、特に仏滅に予約して、料金が安く済ませる人もいます。
「今日は大安だからいい日になりそう!」と信じて行動するだけで、本当にいい日になることもあるので、それだけでハッピーになれる効果があります。
⑥ 赤口(しゃっこう・せきぐち)
「しゃっこう」とか「せきぐち」と読みます。六曜の他の言葉と違って、この漢字からは、意味が一瞬でイメージしにくいですね。私は、真っ赤な口紅を塗った妖艶な女性を思い浮かべます。
実際は「口から血を吐いている、あるいは口から火を吹いている」イメージを連想する人が多いらしく、血や火つまり、刃物や火事に注意を要する日になります。
ランチ時・正午頃だけが吉で、後の時間帯は凶になるので、この日はじっとしておきましょうということになります。
六曜と冠婚葬祭との相性
現在では、六曜と冠婚葬祭との相性は、一般的に以下のように言われています。ただし諸説あり、絶対的に正しい解釈はありませんし、信じない人はまったく無関係になります。
冠婚葬祭・イベント | おすすめ日 | 避けたい日 | 備考 |
結婚式・結納 | 大安 | 仏滅、赤口 | 一般的な祝い事 |
引っ越し・祭りごと | 大安 | 仏滅、赤口 | めでたい節目 |
葬儀 | 仏滅 | 友引 | 通夜は関係なし |
法要(弔事) | 仏滅、赤口 | 特になし | 初七日、四十九日など |
法要(弔事以外) | 特になし | 特になし | 魂抜き、閉眼供養など |
魂抜き・お性根抜きは、六曜のいつやればいいか?
六曜はまったくの迷信だとして、明治時代には政府が禁止した事実もあったようです。政府が禁止するなどたいそうな話です。今で言えば、「占いビジネス禁止令」です。
最近では、六曜を気にする方も少なくなってきました。一方で、まだまだ縁起をかつぐ方も多いので、最終的にはご自身の信じる方向で選択するべきでしょう。
「仏滅」は凶日なので、何をするにも凶であると考えられていますが、一般的に法事は、葬儀と同じく仏滅に行うのがよいという考え方があります。
また、赤口の日は「何をやっても悪日、ただし法事、正午だけは良い」ということも言われているため、法事に限っては赤口に行ってもよいと言われます。
ただし、魂抜き(お性根抜き・閉眼供養)は、葬儀などの弔事(悲しみごと)ではありませんので、気にする必要はないとの考えもあります。
【魂抜き・お性根抜きご供養中】
つまり、仏壇やお墓の、魂抜き・お性根抜きをする際は、縁起を気にする人はあえて「仏滅」を選び、また縁起を気にしない人は、いつでもよいと思います。魂入れ・お性根入れなども同様です。
しかし、「六曜」よりもっと注意すべき、大事なポイントがあります。それは親族・親類縁者の意見です。
特に冠婚葬祭などの場合、あなたが六曜などまったく気にしなくても、親族・親類縁者の中には、古いしきたりや考え方に固執したり、気にしたりする方がいます。それらの意見を無視することは、よけいな親族間トラブルのもとになってしまいます。
したがって、どちらかと言えば、「六曜」の縁起を担ぐことに頭を悩ますよりも、親族・親類との合意を優先させることに気を使ったほうが、法事法要は問題なく進めることができます。
そのために、「六曜」をあえて利用して日程を決めてみるのもよいでしょう。これこそが、無用なトラブルを避けて、円満に行事を進めるための先人の智慧であり、ベストツールとしての「六曜」なのかもしれません。
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