社会の高齢化にともない、仏壇やお墓などをやむなく手放したり、仕舞い処分したりする人が2010年ころから急速に増えてきました。継承者がいなかったり、家庭事情で面倒を見られなくなったり、などが主な理由です。
これら仏壇や位牌のご供養・整理・処分や墓仕舞いなどで必要な仏事の一つに、魂抜き(たましいぬき)やお性根抜き(おしょうねぬき)という儀式があります。
【魂抜き・お性根抜きご供養の例↓】
仏壇やお墓にはご先祖様の魂(霊)が宿っていると考えられているため、その魂を抜いてから処分をしなければならないとされているからです。
ただ、そうした場合、「どのようにして魂抜きやお性根抜きを進めたらいいのか?」「どこに頼めばいいのかわからない」という方が多いです。最近では寺院やお坊さんとの付き合いも希薄になり、気軽に仏事を頼めるところも少なくなってきたからです。
ただ、あまり心配することはありません。魂抜き・お性根抜きはその意味を理解した上で、「どのような場合に必要か」「お坊さんへの依頼の仕方」「最低限の作法」さえ知っていれば、スムーズに進めることができます。
今回は、初めてでも失敗しない「仏壇処分時の魂抜き・お性根抜きの進め方」について解説します。
1:魂抜き・お性根抜きとは何?
魂抜きは、「たましいぬき」または、「たまぬき」「こんぬき」とも読みます。また同じ意味の言葉として、お性根抜き(おしょうねぬき)や閉眼供養(へいがんくよう)などがあります。
仏教のほとんどの宗派では、仏壇やお墓などに「魂やお性根を入れる・抜く」という考え方をします。宗旨宗派や地域により少しずつ考え方は違いますが、ここでは一般的な魂抜き・お性根抜きの意味についてお伝えします。
私たちは、「仏壇やお墓にご先祖様の魂が宿っている」と信じているからこそ、普段手を合わせています。これは、もともと仏壇を買ったときやお墓を建てたとき(納骨時)などに、お坊さんにより魂入れを行ってもらっているからです。
したがって、仏様やご先祖様が宿られた状態のままで、仏壇やお墓を動かしたり処分したりすることは、仏教の考えではタブーとされているのです。
つまり、お坊さんにお経を上げてもらい、仏壇やお墓に宿ったご先祖様の魂を抜いてもらい供養をする必要があるのです。魂抜き・お性根抜き供養とは仏壇の仕舞い・処分をしたり、墓仕舞い・改葬(リフォーム)をしたりする際の、仏教上の儀式のことをいいます。
魂を抜くことによって、仏壇はただの入れ物・箱になります。また、お墓ならただの石に戻した後、動かしたり処分したりしてもよいという考え方になります。
ちなみに浄土真宗では、魂入れや魂抜きという概念がなく、代わりに入仏法要(にゅうぶつほうよう)・遷仏法要(せんぶつほうよう)という考え方があり、同じように読経の儀式が行われています。要は、宗旨宗派が違っても、お経を上げることによって仏壇やお墓は、魂が宿ったりただの入れ物に戻ったりするのです。
2:仏教徒でない人の魂抜きへの対応について
ところで、魂やお性根は私たちの目には見えませんので、「仏壇やお墓に本当に魂が入っているかどうかなんてわからない」と考える人もいます。一部の霊能者や霊感の強い方などを除き、ご先祖様の魂(霊)が実際には目に見えるわけではありません。
当然、サイト管理人の私にも魂は見えません。ただ、これは「信じるかどうか」という問題です。「見えるか見えないか」ではなく、「信じるか信じないか」の話です。
【お地蔵様信仰の例↓】
日本では信教の自由が許されています。もしあなたやあなたのご家族・ご先祖様が仏教徒である場合はもちろん魂を信じているでしょうし、「仏教を信仰していない」という人は魂の存在を信じてはいないでしょう。
ただ、あなたが仏教徒でなくても、先祖代々の仏壇やお墓を整理処分する場合は、魂抜き・お性根抜きという仏教上の作法にのっとり進めることが、ご先祖様への感謝の気持ちを表すことになります。そして、そのことが自分自身の心のけじめにもなるはずです。
あなたが仏教徒である場合はもちろん、仏教徒でない人でもご先祖様に最低限の感謝の気持ちを表したい場合、以下の魂抜き・お性根抜きの流れを知って役立てていただければ思います。
3:どんなときに魂抜きが必要になるのか?
魂抜き・お性根抜きは、どのような場合に必要になってくるのでしょうか? 具体例は以下のようなケースで魂抜きが必要になります。
・位牌の処分
・仏像、脇侍軸(わきじじく、仏壇内の掛軸)、遺影(写真類)、人形などの処分
・仏壇の引っ越し
・仏壇の同じ敷地内の別の家屋(別棟)への移動(お部屋間の移動は通常魂抜き不要)
・お墓の改葬(建て替えやリフォーム)
・お墓の移転、引っ越し
・お墓の解体処分(墓終いまたは、墓仕舞いといわれるもの)
・墓石本体への戒名追加(この場合は魂入れ)
・お地蔵様の移動、撤去、処分
【位牌の魂抜き・お性根抜きの例↓】
いずれの場合も、魂抜き・お性根抜きの読経が終われば、仏壇やお墓は自由に動かしたり処分したりすることができます。
4:魂抜きの進め方
実際の魂抜き・お性根抜きの「法要(ほうよう)」の進め方について解説します。法要とは、各種仏式行事(葬儀・四十九日や、お盆・〇〇回忌など)で、お坊さんに読経などを行ってもらう儀式のことです。
法要の一種である魂抜き・お性根抜きも、寺院・お坊さんに依頼します。あなたが、すでにどこかの寺院の檀家さんでお坊さんとお付き合いがある場合には、その寺院のお坊さんに直接魂抜き・お性根抜きをお願いしてください。
檀家とは、寄付をしたりお布施をしたりして、その寺院の運営を支える会員みたいなものです。一般的に、お坊さんは檀家さん以外に対して法要を行ないません。
ただ、最近は檀家離れが進むにつれ、寺院やお坊さんとの付き合いがない方も多くなっています。このように檀家さんでない場合、いきなり初めての寺院に魂抜きをお願いしても断られる場合が多いです。いわゆる「一見さんお断り」というパターンです。
そうした際には、「お坊さん手配・紹介サービス」などを活用するか、「ご供養じまい専門業者」などに依頼することで、魂抜き・お性根抜きを行うことができます。
お坊さん手配サービス▶魂抜き供養なら。お布施一律3.5万円~(大阪)
ご供養じまい専門業者▶お位牌などの魂抜き・お焚き上げ
「お坊さん手配・紹介サービス」は、お布施料金も明確ですので安心して利用できます。また、「ご供養じまい専門業者」は、魂抜き・お性根抜きの手配から仏壇・位牌の最終処分まで一式すべて行ってもらえるので、わずらわしい手間がいりません。
このように、魂抜き・お性根抜きの儀式は自分で行うことができないため、不安で面倒と考えてしまいがちです。ただ、今回お伝えしたように魂抜き・お性根抜きの意味を理解し、お坊さんや専門業者への依頼なども簡単にできることを知っていれば、不安なく魂抜きを進めることができます。
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