仏教や仏壇に対する考え方がかなり変わってきています。いわゆる「葬式仏教」といわれる儀式のためだけの仏教や、わずらわしい檀家関係に疑問を持つ人が増えてきているからです。
そうした中、両親が亡くなったり引っ越しをしたりなどを機会に、仏壇整理や仏壇処分をする人が増えてきました。
ただ、仏壇の場合、普通の家具などとは違いどのように整理処分をすればいいのかわからない場合が多いです。
「お坊さんに供養をお願いしなくてはいけないのかな?」など、わずらわしく面倒なイメージがあります。
そうした中、今回は仏壇の大きさや規模にかかわらず、簡易に供養をして整理処分する方法を解説します。
仏壇処分前に供養をする理由
魂を入れるという概念
一般に仏教の多くの宗派では、初めて仏壇を家に入れたり、新しく仏壇を購入したりした際に、「開眼供養(かいげんくよう)」という魂入れ(たましいいれ)・お性根入れ(おしょうねいれ)の儀式を行ないます。
仏壇内部の正面にお祀(まつ)りしてある御本尊様と、その左右両脇侍(わきじ)の仏像や掛軸に対し魂を入れます。魂はお性根(しょうね)や霊(たま、れい)ということもあります。
魂を入れる事により、仏様やご先祖様に感謝の気持ちを込めて日々の供養を行っていく準備を整えます。
また同時に、位牌などにも魂を入れます。寺院やお坊さんによっては、遺影写真や過去帳などにも魂入れの儀式を行う場合も多いです。
魂を抜くという概念
このように最初に魂を入れるので、面倒を見られなくなって仏壇の整理処分をする場合には、あらためて魂を抜くという儀式が必要になります。
これらの儀式は一般には、魂抜き・お性根抜きと言われるものです。宗派により呼び方は変わりますが、「閉眼供養(へいがんくよう)」と呼ばれることが多いです。
ただ、浄土真宗では魂の概念がありませんが、仏壇を買ったときや処分する前には、同じように「入仏(にゅうぶつ)供養」や「遷座(せんざ)供養」などと呼ばれる儀式を行います。
このような魂抜き・お性根抜きなどの供養はお坊さんに依頼して行ってもらいます。あなたがどこかの寺院の檀家さんである場合は、その旦那寺のお坊さんに依頼します。
直接お坊さんに知り合いがなくても、ネットでお坊さんの手配や紹介をしてもらえる便利なサービスもあります。
仏壇本体は入れ物
このようにして、仏壇内の御本尊様・ご先祖様・位牌・遺影・過去帳などから魂・お性根を抜くことにより、仏壇を単なる入れ物にします。
単なる入れ物ですから、理屈としては一般の家具などと同じように廃棄処分で扱ってもよいことになります。ただ、いくら魂を抜いたからと言って心理的な部分では、自分で仏壇を廃棄処分することに抵抗がある人もいます。
そうした場合でも、「お坊さんによる魂抜きの供養は終わっています」といえば、通常は遺品整理業者や片付け業者・引越し業者さんは処分のお手伝いをしてくれる場合がほとんどです。
それでも拒否された場合は、仏壇供養処分の専門業者もありますので、魂抜き供養から処分まで一式を行ってもらえます。
仏壇から魂を抜く簡易な方法
魂を抜く3つの方法
ところで、仏壇から魂・お性根を抜くなどの供養方法には以下の3つのパターンがあります。
2、専門業者に依頼する
3、供養対象物を送付する
この内、最も簡易な方法が3の「供養対象物を送付する」方法です。まずは簡単に、それぞれ3つの方法をひとつずつ見ていきます。
1、お坊さんに家に来てもらい、供養してもらう方法
最も正式なやり方です。お坊さんに家に来てもらい、直接仏壇の前でお経をあげていただきます。檀家さんの場合は旦那時のお坊さんに、檀家さんでない場合は僧侶手配サービスなどで探して依頼します。
昔からある一番安心できる方法ですが、準備や対応がわずらわしいというデメリットもあります。さらに、檀家さんの場合は、お布施をいくら渡したらいいかわからないという心配もしなくてはなりません。
そして、お坊さんに供養をしてもらったあと、仏壇の廃棄処分は自らしなくてはならないので、これらも手間になります。
2、仏壇処分専門業者に依頼して、供養してもらう方法
2番目の仏壇処分専門業者に依頼する方法は、魂抜き供養から仏壇引取~最終処分までを一式行ってもらえるので、手間が省けます。
希望すれば、お坊さんの手配もしてもらえます。また、お坊さんを家に呼びたくない場合も、仏壇引取後に魂抜き供養をした上で、供養証明書の発行などもしてもらえます。
あなたは何もしなくても良いので、一番楽な方法です。
3、供養対象物を送付し、供養してもらう方法
3番目の供養対象物を送付して供養してもらう方法は、もっとも簡易なやり方と言えます。これは供養対象物である、「御本尊(仏像・掛軸)、位牌、遺影写真、過去帳」などを専門業者に宅配便で送付して、魂抜き供養をしてもらう方法です。
などの場合は、便利なサービスです。
送付後に魂抜き供養をしてもらえば、仏壇本体はただの入れ物になりますから、通常の家具等と同じ扱いで処分することが可能です。
また、仏壇本体ごと送付することも可能ですので、そうした場合は廃棄処分手間も省けます。全国送付対応の位牌・仏壇の供養処分業者に依頼します。
まとめ
仏壇処分の簡易な方法について解説しました。伝統や格式を重んじる家では、もちろんお坊さんにおいでいただくことが一番でしょう。
ただ、あまり儀式にこだわりがない場合や、費用を安く済ませたい場合は、供養対象物を宅配便で送付して供養処分する方法でも良いでしょう。
また、お坊さんとのわずらわしい檀家関係を避けたい人も多くなってきていますので、仏壇処分を機会に一つの区切りをつけるのも良いかも知れません。
伝統・儀式・作法も大切ですが、やはり供養の基本は「ご先祖様への感謝」です。この感謝の気持ちを忘れずにいれば、あまりルールにこだわりすぎなくても良いかと思います。
いずれにしても、親族・家族とよく相談して、あとあと揉めることのないよう対応することをおすすめします。