日本で、通常行われていた大規模な葬儀・葬式(一般葬)がだんだんと減ってきています。一方で、経済的に行える「家族葬」で、故人のお葬式を執り行う方が増えています。
親族や親しい知人のみで行われる参列者の少ない葬式ですが、内容は一般葬とさほど遜色ありません。以下では、家族でゆっくりお別れできる家族葬について、そのメリットと流れを解説します。
家族葬のメリットとデメリット
家族葬は昨今の家庭事情を反映したお葬式内容といえます。その最大のメリットが、遺族の経済的な負担が一般葬と比較して大幅に削減されることです。
家族葬は、お葬式自体をよい意味でできるだけ簡素な内容にし、参列者の方も近親者のみとすることで、お互いの経済的、肉体的な負担を減らすことができます。
ただ、デメリットとして、一般葬との規模のギャップが大きいため、親類などの方々からの理解が得られない場合もあるということです。しかし、このデメリットも、遺族の経済事情などを説明し理解してもらえれば、親類にも了解を得ることができると思います。
故人を見送るために、それなりのきちんとした葬式はしたい。ただ、あまり大げさなものではなく、親族・近親者だけで心のこもったお別れをしたい。そんな人に家族葬は向いています。
それでは、家族葬の流れを見ていきます。
家族葬の流れ
家族葬の大まかな流れは以下のようになります。流れ自体は一般葬とほとんど変わりません。ただ、一般葬でよく見られる「葬儀委員長のご挨拶」のようなたいそうなスピーチがなく、こじんまりと行なうイメージです。
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2、遺体の搬送・安置
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3、参列者リストの作成~連絡
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4、式次第の打ち合わせ
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5、お通夜・告別式
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6、式中初七日
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7、火葬
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8、各種手続きと納骨
それではこの流れに従って一つずつ見ていきます。
1、葬儀社を決める
葬儀社選びの3つのポイント
まず、葬儀社を決めなければなりません。事前に決めてある場合は問題ありませんが、突然の場合は、急遽決めなければいけませんから、注意が必要です。
家族・親族だけとはいえ、大切な儀式です。こじんまりとしながらも、故人を偲ぶ気持ちには変わりありません。そこで、重要となってくるのが、葬儀後にも多少のお付き合いがあるもしれない葬儀社選び。
家族葬プランを用意している葬儀社がほとんどですので、その葬儀社選びのポイントをいくつか挙げてみましょう。
その1:費用が明確である
やはり、葬儀費用が明確であることです。家族葬の最大のメリットはその費用の安さですが、下手をすると一般葬と同じになることも多いようです。
その理由は、割引と謳われている宣伝文句の中には、もともと、葬儀プラン自体が割高に設定されている場合があったりする場合もあるからです。
そして、葬儀には実際の葬儀にかかる費用の他に、後日発生する返礼品などの費用もあり、それらが以外と高くついてしまう場合があります。
そのような想定外の費用などにも、あらかじめ明快に説明してくれる葬儀社を選ぶことがポイントの一つです。
また、お坊さんにお渡しするお布施についても考慮に入れておきましょう。要は、葬儀の費用・葬儀後の費用・お布施費用など、総額いくらかかるかを明確に答えてくれる葬儀社が安心です。
その2:できるだけ事前相談をする
可能な限りの事前相談に応じてくれる葬儀社を選びたいものです。高齢社会化に伴い、葬儀人口も増えつつあり、それと比例して葬儀社も大小さまざまです。
もちろん、テレビコマーシャルなどで名前の知れた葬儀社チェーン(ここの文中で使う表現です。)もあれば、地元に昔からある中堅の葬儀社もあります。
いろんな葬儀社に相談をして、ここの葬儀社なら安心だと思える葬儀社をみつけておくことがおすすめです。
安心という意味は、費用はもちろん、葬儀会館の雰囲気や自宅からの距離、駐車場の広さなどです。実際に自分の目で見て確認するのが一番です。
生前準備の一環として、そのような葬儀社や葬儀会館を探しておくと、やはりいざと言うときに慌てることもありません。
その3:病院の紹介はどんな葬儀社かわからない
急な葬儀の場合、まったく準備していないことがほとんどです。そのような場合、病院で紹介された葬儀社はどのような葬儀社かまったく分かりません。
あまり余裕がないかもしれませんが、病院で紹介された葬儀社以外にも検討をしましょう。もちろん、それなりに信用はおける葬儀社を病院側も紹介してくれるでしょう。
ただ、インターネットでたくさんの葬儀社紹介サイトもありますので、足元を見られないためにも複数社検討することをおすすめします。
2、遺体の搬送・安置
葬儀までの間、遺体を一旦安置しておく必要があります。自宅でなくなった場合などを除き、そのまま遺体をその場所へ置いておくことは通常できないため、搬送します。
実際に、搬送~安置までは、葬儀社にお願いするのが一般的です。搬送先は、葬儀会場もしくは自宅になり、そこからは葬儀社に任せます。
お通夜までの準備として、ご遺体をきれいに整え納棺するので、その間に参列者・連絡リストを作成します。同時に、時間の合間を見ながら家族葬の進行などの打ち合わせも発生してきます。
3、参列者リストの作成~連絡
遺体の搬・安置が終わり、次にやらなければいけないことは、実際に葬儀に参加されるかたの参加者リストを作成することです。
家族葬ですから、参加者を絞り込む必要があります。そのリストの対象者となるのが、まずは故人の直系家族(子供など)、配偶者の家族、故人の親族、兄弟姉妹の方々などです。
それ以外の、例えば、故人の近しいご友人・知人、おめ先であった会社の同僚、上司などは、家族葬の参列者としては対象外となることもあります。ここには故人の遺志も関係してきますので、遺族で話し合いが必要です。
このように、故人と親しくても葬儀に呼ばない人には、あらかじめ、家族のみで行なう旨をお伝えしておくことが必要です。
4、式次第の打ち合わせ
参列者リストの作成~連絡と同時に、式次第の打ち合わせを葬儀社とします。
喪主は、故人の夫、妻、もしくは、長男が行うのが一般的です。喪主が決まりましたら、葬儀社の担当者との打ち合わせとなります。ただ、時間的にあまり余裕がないので、おおまかな流れの確認程度で、あとは式の進行中に担当者のフォローが適時入ります。
そして、お坊さんの手配も大切な準備の一つです。葬儀のプランには入っていないこと多いため、自己手配が必要になってくる場合もあります。
故人の実家の宗派で、昔からお付き合いのあるお寺さん(旦那寺)がありましたら、そのお坊さんが一番良いです。ただし、遠方で当日会場までお坊さんが来るのが困難な場合もあります。また、そもそも旦那寺がない人もあります。
そうした場合は葬儀社さんが手配してくれますし、現在はAMAZONでお坊さんが手配できたりもします(お坊さん便)。インターネットでお坊さん手配のサイトもたくさんありますので、自分でそれらを利用するのもひとつの手段です。
依頼した葬儀社に相談すると、別途費用はかかりますが、お坊さんの手配もしてくれます。どうしてもという時は、葬儀社にお坊さんを手配してもらいましょう。
5、お通夜・告別式
以上の準備を整えたら、お通夜になります。お通夜というと一般葬では、当日のお葬式にどうしても来られない方などが、ご焼香を上げに来てくださったり、ご挨拶に来てくださったりするイメージです。
ただ、家族葬の場合は、故人をひっそりと見送る最後の夜というイメージでしょう。一般葬のような焼香客の相手に紛争する忙しいイメージではありません。家族葬は、こじんまりとお通夜を過ごすのが一般的です。
また、お通夜は、お棺のお線香が消えないように番をする必要がありますが、今は消えないお線香を葬儀社さんが用意してくれるので、ある程度夜が更けてきたら、喪主様もお休みされるのが良いでしょう。
そして、翌日の本葬となります。祭壇が用意され、お棺が祭壇に安置されるのが翌朝になります。
この時点で、手配したお坊さんが到着し、喪主からお坊さんにお布施をお渡しします。(お布施は、個人的な寄付行為ですので、葬儀費用とは別になります)
そして、参列者が揃ったら、いよいよ本葬となります。一般葬のような本格的な告別式が行われないのが通常の家族葬の流れとなっています。喪主の挨拶が終わりましたら、お坊さんの読経が始まります。
その間、参列者の焼香が行われ、読経後、お官に最後のお別れを行い、霊柩車にお棺を納めます。かなり、単調なようですが、家族葬は本来このように葬儀に必要な最低限の式を行っていきます。
6、式中初七日
故人が亡くなってから、最初に執り行われる法要が、初七日法要です。一般的には、個人が亡くなった日を起点に7日目に執り行われる法要のことをいいます。
ただ、現在ではほとんどの場合、葬儀の当日、告別式のあとに行う場合がほとんどです。これを式中初七日といいます。
式中初七日は、告別式のすぐ後に行う場合と、火葬後に行う場合がります。地域の風習や、火葬場の能力(火葬時間)によっても違いますので、葬儀社に確認しておきましょう。
これは、参列者の負担を減らす意味があり、お坊さんが読経され説法を聞きます。執り行われる時間もそれほど長い時間ではありません。
家族葬プランに盛り込まれているかどうかをあらかじめ確認して、この式中初七日を行うことを最初にお坊さんにも伝えておきましょう。
そして、式中初七日が終了したら、精進落としとして、仕出しの料理を参列者の方々に振舞います。ここでも喪主は簡単に挨拶をした後に、皆さんに召し上がり頂きます。
7、火葬
告別式が終わったら火葬です。火葬で心配になるのは、どこで、どんな手続きを踏むかということですが、ほとんどの葬儀社ではこの手続き代行してくれますので、安心しましょう。
すでに、最初の打ち合わせ時点で葬儀社の担当の方が火葬場に手配してくれます。そして、火葬許可証が即日発行されます。基本的には、故人が亡くなった自治体の公営の火葬場でおこなってもらいます。
公営ということもあり、平日でも順番待ちになることが多いです。館内に待機してお名前が呼ばれたら実際にお棺と一緒に火葬場に移動し、火葬に移ります。
火葬の際、お棺に故人の記念品などを入れますが、小物など燃えやすいものは入れても大丈夫です。ただ、近年ではルールも厳しくなり、燃えないものは一切棺に入れることができなくなりつつあります。
また、存命の遺族の写真などを一緒に入れるのはよくないとされています。故人と一緒に持っていかれる(故人に引っ張られる)という因縁がある為、あまりよくありませんので、控えたほうがよいです。
火葬が終わると、遺骨を骨壺に入れます。地域によって、全収骨か部分収骨かが違います。
たとえば関西ですと、部分収骨のため、故人の体の部位ごとに収骨するので、火葬場の係りの方の指示に従って、骨壺に納めていきます。
関東は全収骨になります。その骨壺と火葬許可証を受け取り、火葬は終了です。
8、各種手続きと納骨
以上で、家族葬の流れを簡単に説明しました。火葬後の役所への各種手続きや、お墓・納骨などについては、別の記事としてアップしていきます。
9、まとめ
個人的に私の父を亡くした時も、急なことでしたので、やはり不安な気持ちになりました。誰しも初めての場合、経験がないことですので無理もありません。
ただ、葬儀とくに家族葬に関しては、できるだけ事前準備をしておくことがおすすめです。これはいざという時慌てないという意味もありますが、葬儀社に足元を見られないということもあります。
あとで後悔しないように、しっかりと準備をしておきましょう。