2010年ころから、「檀家を離れたい、檀家関係がわずらわしい」という人の相談をよく受けます。その理由は主に次のような内容です。
・一回ポッキリでお坊さんに供養を頼みたい
・檀家関係がわずらわしく、精神的・経済的にしんどい
・檀家をやめたいと言ったら、高額の離檀料を請求された
・仏壇処分で魂抜きを依頼したら、強引に引き止められた
・お布施や寄付金が高額で半強制的
これらの意図を集約すれば、
わずらわしい菩提寺との檀家関係を解消して、精神的・経済的に身軽になりたい
と、とらえることができます。
檀家とは、その寺院の登録会員やサポーターのような立場です。そして檀家が所属している寺院を菩提寺(ぼだいじ)と呼びます。一般に、菩提寺のお坊さんは檀家さん以外に対して法要を行なわない慣習です。
【お坊さんによる法要の例↓】
上記の理由の他に、やむを得ず檀家関係を解消せざるを得ない事情もあります。たとえば、
・墓を田舎から今住んでいる場所に移す
などです。
ところが、このようにやむを得ない事情ばかりではなく、「ただ檀家関係がわずらわしい」という人もいます。檀家は寄付を行うことによって菩提寺を維持・運営していくことが主な役割です。そのため、継続的なお布施などの寄付が、だんだんと経済的・心理的な負担になっていきます。
そして、お坊さんとの付き合いも長くなると、やはりそこは情も生まれ、簡単に縁を切ることが難しくなり、それがさらなる心の負担になるからです。
では、檀家関係を解消したい場合、どのようにすればスムーズに、また問題なく進められるのでしょうか?
実は、「そもそも檀家制度とは何か?」ということを、その成り立ちを含めて知っておくだけで、少なくとも精神的にはかなり楽に檀家関係を解消することができます。
そこで今回は、「檀家をやめたい時に知っておきたい檀家制度」及び、「檀家を離れる方法」について説明していきます。
1、そもそも檀家制度とはなにか?
1-1:檀家をやめる際の不安とは?
檀家関係を解消する際に多くの人が不安になることは、およそ次のような内容になります。
檀家をやめる際の不安なことリスト
・お坊さんに強引に引き止められるのではないか?
・高額の離檀料を請求されるのではないか?
・菩提寺に墓がある場合、墓はそのままで檀家だけをやめることはできるのか?
・檀家をやめたら、墓の移動・引っ越しに協力してくれないのではないか?
・墓地を返還する際、違約金などを請求されないか?
・今後、もし法要が必要な時、誰に頼めばいいのか?
・ご先祖様に対して背信行為になるのではないか?
また、このような不安が起こる要因として、次のような、お坊さんに対する疑心暗鬼(本音・印象)があります。だれでも一度は思ったことがあるはずです。
お坊さんに対する本音・印象リスト
・坊主丸儲け
・寺院は税制で優遇されていて不公平
・葬儀でお経を読むだけで「え~、30万円もかかるの?」(すごい時給!)
・戒名を付けてもらうだけで、なんで何十万もかかるの?(利益率ほぼ100%)
・仏壇の魂・お性根抜きを依頼したら70万円請求された(ホントの話です)
・仏壇の製作をお坊さんに任せたら、最初800万円と言われ、交渉したら一気に400万にしてくれた(これもホントの話です)
・高額のお布施で、高級車に乗り、夜の街で遊びまくっているうわさ
・なんであんな立派なお堂が建てられるのか不思議
多くのお坊さんは、まじめに真摯に修行や布教活動に取り組んでおられ、質素な生活をしておられるのも事実です。一方、一部の心ないお坊さんによって、このようなマイナスイメージを一般人は持ってしまいます。
したがって、このような印象があるがゆえに、檀家をやめる際、上記のような不安を持ってしまうのです。ただ、次に説明する檀家制度の本質を知れば、あまり不安になる必要はありません。
1-2:檀家制度はもともと国の政策だった
檀家制度は、江戸時代にできました。江戸幕府を開いた徳川家康の政策です。政策ですので国の制度です。たとえば2019年現在で言うなら、自民党安倍政権が作った制度や法律みたいなものです。
その徳川政権が作った檀家制度には、主に以下の2つの内容があります。
1つ目:日本人は、必ず仏教のどこかの宗派に属しなさい
2つ目:先祖代々の宗派は変えてはいけない
という内容です。
つまり、「信仰・信教の自由の禁止」「改宗の禁止」の2本立ての制度です。この制度を作った理由の一つは、キリシタン弾圧です。日本人がキリシタンにならないよう、無理やり国民全員が仏教徒にさせられてしまったわけです。
そして、もう一つの理由は、寺を幕府の組織の出先機関として利用したかったからです。それぞれの宗派に属する人々を、その菩提寺で一括管理させるためです。つまり、市役所の「戸籍や現住所管理の役割」を寺に持たせました。
この制度により、通行手形の発行や、葬儀・法事などでの人口や人間の動きあるいは、幕府への反乱の兆しを把握できます。現在の「マイナンバー」のような管理制度にも思えます。寺=役所になってしまったのです。
なんとなくお坊さんが偉そうにして見えるのは、この役所意識が残っているからかもしれません。つまり、お坊さんが自ら布教や信者獲得(会社なら集客活動)の努力などしなくても、檀家制度によって勝手にみんな信者になってくれていたからです。
1-3:仏壇は証明書?
日本人がどこかの寺に所属する仏教徒である証に、各家庭に仏壇を持つようになったと言われています。つまり仏壇は、徳川幕府に服従しているという証明書・証明品であったともいえます。
【仏壇は仏教徒の証明書?↓】
このように檀家制度は、もともとは政府の強制によって始まりました。いつのまにか、この制度が当たり前のように生活に根付き、現在まで400年ほど続いているのです。
あなた自身は特に信仰はしていないのだけれど、家の宗教が仏教だから、葬儀や法事などの仏事のときだけ仏教徒になる人も多いのではないでしょうか?
現在は江戸時代と違って、憲法で信教の自由が認められていますから、家の宗教や宗派が何であろうと、誰でも自由に好きな宗教を個人で選択し信仰できるのです。
家に仏壇があるからと言って、あなた自身がキリスト教徒でもまったく問題はありません。誰かにとやかく言われる筋合いはないわけです。信仰の自由は個人の権利だからです。
2、檀家の離れ方
2-1:檀那寺との関係をどうする?
このように、檀家関係はもともと政府の強制で始まりました。ところが現在は、信教の自由が憲法で保証されています。
宗派や宗教を変えることも、また無宗教になることも、さらには菩提寺そのものを変えること自体も、少なくとも法的にはまったく問題ありません。あなたと寺院が、書面にて正式に檀家契約を交わしていない限り、いますぐ檀家を離れることができます。
したがって、菩提寺のお坊さんには正直に、そのまま檀家を離れる旨を伝えてよいでしょう。そのポイントは、
ポイント1:今までお世話になったお礼を述べ、感謝の気持ちを伝えること
ポイント2:檀家を離れなければならない理由を明確に伝えること
です。
人としての礼儀として、感謝の気持を伝えることは最低限のマナーです。なにも金品を渡さなければいけないということはありません。
また、檀家を離れなければならない理由としては、主に以下の様なものがあります。
無難な理由(お坊さんも納得せざるを得ない)
・両親が亡くなり、実家や仏壇を引き継ぐものがいない
・実家や仏壇はそのままにしておくが、継承者が遠方に住んでいる
・仏壇・位牌・お墓の面倒が見られず処分したい
・実家の宗派・宗教から嫁ぎ先の宗派・宗教に、しかたなく変更する
できれば言わないほうが良い理由(お坊さんから引き止められやすい)
・宗派を変えたい
・宗教を変えたい
・無宗教になりたい
などです。
檀家を離れること自体は法的に問題ないので、あとはお坊さんとの人間関係を壊さず、また揉めずにきれいに離れることが、スムーズに離壇するポイントです。
2-2:離檀料は必要か?
「檀家を離れたい」と、お坊さんに相談した場合、高額の離檀料(お布施)を請求されるという話を聞きます。「戒名返納料」などというよくわからない費用を請求されたという話も聞きます。この場合、寺院との檀家関係契約書のような書類があれば、その契約内容に従わざるを得ません。
【高額のお布施を請求されることもあり】
ただ、そのような檀家契約書の類の書面はおそらくほとんどの場合、存在しないと思います。仮にそのような書面が存在していて、解約時の違約金(離檀料)についての条項があったとしても、それはあなた自身が交わした契約ではないはずです。
ご先祖様が交わした大昔の契約なら、離檀料について書かれていたとしても、現在の価値では大した金額ではないはずです(相続している場合)。寺院側もあなたも、弁護士に相談する方がおそらくお金がかかってしまいます。放っておくのが、双方とも得策です。
あなたが無視をして、仮に寺院側から離檀料請求訴訟を起こされたとします。その場合、あなたは「離檀料のトラブル」など、かっこうのマスコミ記事として利用することが可能です。
そうなれば、寺院側のマイナスイメージは計り知れないものになってきます。檀家制度という問題にも一石を投じることができます。寺院側も、たぶんそのような方向は望まないでしょう。
近年では、離檀トラブルを避けるため、離檀の代理交渉をしてくれる法律家(行政書士など)もいます。もしトラブルを避けたいなら、そういったところへ相談するのも一つの方法です。
2-2:離壇したらお坊さんはどうやって探す?
檀家を離れた場合、あるいは元々どこのお寺の檀家でもない場合は、葬儀や法要などの各種仏事の際、お経をあげてもらえるお坊さんを探す必要があります(仏式で葬儀をする場合)。
檀家を離れたら、いざという時誰に法要を頼めばいいのか?と不安になる人もいますが、最近はいろいろと便利なサービスがあります。
例えば、一般的な法要の際には、「お坊さん手配・紹介サービス」などでお坊さんを探すことができます。菩提寺のように、顔見知りのお坊さんが来るわけではないので少々不安ですが、最大のメリットは、お布施つまり、料金が明確であるということです。
また、仏壇や位牌の供養整理処分、墓仕舞いなどの際には、「仏壇整理処分専門業者」や「ご供養じまい専門業者」に依頼して、魂・お性根抜き法要を依頼するという方法があります。
お布施などを含め、料金が明確であるのはもちろんですが、仏壇などの回収から最終処分まで一式をしてもらえることが専門業者の特徴です。
【仏壇整理処分専門業者による搬出例↓】
今回は、「檀家を離れる際に知っておきたい檀家制度」及び、「檀家を離れる方法」について説明しました。法的には問題ない場合でも、のちのちトラブルが起きるのは避けたいものです。大切なことは、家族や親族と充分な話し合いをして、みなさん合意の上で進めることです。
また、菩提寺のお坊さんには、「心をこめて、先祖代々お世話になった感謝の気持ちを伝える」ということに尽きると思います。この気持さえあれば心は通じ、問題なく檀家を離れることがきっとできるはずです。
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