お仏壇を継承する者がなく、面倒が見られなくなって供養処分をする人が増えてきています。そうした場合、「仏壇の中にある、仏さまの画が描かれている掛け軸(ご本尊)は、どのように供養処分したらよいのか」と、多くの方が悩みます。
また、「掛け軸とは仏さまなのか?」や、「掛け軸と実際の仏像はどう違うのか?」などという疑問もあって処理の仕方に困るのです。
両親や祖父母が、毎日手を合わせていた仏壇内の掛け軸なので、そのままポイッとゴミに出すなど、粗末に扱うにも抵抗があります。
【中心の仏像と、両脇の掛け軸の例↓】
ただ心配する必要はありません。仏壇内にある掛け軸の供養処分方法は、「魂やお性根を抜く」「お焚きあげなどの廃棄処分をする」の2ステップが基本です。
今回は、この仏壇内の掛け軸の処分方法について解説します。
仏壇内の掛け軸とはなにか?
掛け軸とは?
仏壇内にかかっている掛け軸とは、本来は仏像です。木製の彫刻された像や、あるいは金属製のものなど、もともとは仏像が置かれてあるのが、本来の仏壇の姿です。
ただ、仏壇スペースの問題や経済的な点から、仏像の簡易版として、仏像の画が書かれた掛け軸を代替品として使用される場合が多いのです。
したがって、掛け軸は仏像と同じ扱いになります。掛け軸を供養処分する場合は、ご本尊仏像を処分することと同じ意味になります。
ここではまず、「掛け軸、つまり仏像とは何か?」を知ることが、スムーズな供養処分の第一歩です。
掛け軸=仏像の意味
仏像の元である仏(ほとけ)とは、仏教の完全な悟りを開いた聖人のことを言います。仏は「仏陀(ブッダ)」とも呼ばれます。そして、悟りを開いた聖人なら、誰でも仏と呼ぶことができます。
また、仏教の開祖であるお釈迦様(おしゃかさま)は実在した人物ですが、このお釈迦様もまた、悟りを開いた一人という考え方なので、仏や仏陀と呼ばれます。このお釈迦様(仏・仏陀)が、神格化・偶像化されてできたものが仏像です。
【仏像の例↓】
そして、悟りを開くとは、迷いや苦しみのない「あの世」に行けることです。悟りを開けば、誰でも「あの世」へ行けるという考え方が、仏教のベースにあります。
そのため、多くの人が仏像を崇拝するのです。仏像を崇拝することにより、悟りを開き、迷いや苦しみのない「あの世」に行けるよう願うのです。
仏像と神さま
仏教が日本に伝わってきた時、仏像という目に見えて分かりやすい崇拝の対象があったことが、日本に仏教が広まった要因の1つとも言われています。もともと、日本に古来よりあった神道には、神の像を作るという習慣がなかったからです。
【神棚にお神札はあるが、神さまの像はない↓】
神棚やお神札はありますが、神さまの像はありません。神道は、山や岩や森などの自然を崇拝の対象としていたので、人々にとって抽象的でした。そこへ仏教が伝わり仏像が現れ、日々手を合わせるにはとてもわかりやすい具体的な崇拝対象となったのです。
掛け軸=仏像の種類
4種の仏像
掛け軸、つまり仏像には大きく4種類あります。如来(にょらい)、菩薩(ぼさつ)、明王(みょうおう)、天部(てんぶ)です。如来像は、釈迦の姿を基本として作られた、仏像の本家本元、いわゆる元祖です。
また、菩薩像や明王像は、どちらも悟りを開こうと修行を積んでいる者の姿を表しています。さらに、天部像は、如来像、菩薩像、明王像を仏敵から守る守護神の総称です。
例えて言うなら、如来が社長、菩薩が専務、明王が部課長、天部は一般社員のようなイメージです。
私たちがよく目にするのは、たいていこの4つの像のうちのどれかです。そして、仏壇の中には、木製や金属製の仏像、またはそれらが簡易化された、仏像の画が書かれた掛け軸がまつられているのです。
ご本尊と魂・お性根
仏壇上部の、真ん中にあるのがご本尊(ほんぞん)、左右にあるのが脇侍(わきじ)と呼ばれています。ご本尊・脇侍は、すべて実際の仏像の場合と、すべて掛け軸の場合、または仏像と掛け軸の組み合わせの場合があります。
【仏像と掛け軸の組み合わせ例↓】
【すべて掛け軸の場合の例↓】
掛け軸は、最初に仏壇の中にまつる際、「開眼供養(かいげんくよう)」と呼ばれる「魂入れ(たましいいれ)や、お性根入れ(おしょうねいれ)」の儀式を行ないます。すなわち、掛け軸・仏像や仏壇には、仏や仏になった故人、先祖の魂などが宿っていると考えるようになったのです。
つまり、掛け軸を処分する際には、位牌などと同じように、魂やお性根を抜くことが必要とされています。故人や先祖の魂が宿ったまま掛け軸を処分することは、やはり心苦しいものです。
ご先祖様へ感謝の気持ちを表す意味でも、掛け軸を処分する際に、魂やお性根を抜くことは、ぜひ済ませておきたい儀式の一つです。
掛け軸の処分方法手順1:掛け軸から魂・お性根を抜く
魂・お性根抜き
掛け軸から「魂を抜く」という儀式を、魂抜き(たましいぬき)または、お性根抜き(おしょうねぬき)、もしくは閉眼供養(へいがんくよう)といいます。
魂抜きやお性根抜きは、お坊さんに読経をしてもらいます。通常は、掛け軸や仏像だけを単独で供養処分することはあまりありませんので、多くの場合、仏壇や位牌とともに魂抜き・お性根抜きをお願いします。
【仏像や掛け軸の魂抜き・お性根抜き状況↓】
お坊さんへ依頼するには?
あなたが、お坊さんとお付き合いがある、または、菩提寺(ぼだいじ)の檀家(だんか)さんである場合は、直接お坊さんに魂抜き・お性根抜き(閉眼供養)をお願いしてください。
檀家とは、寺院の登録会員のような意味合いです。そして、その登録している寺院が菩提寺です。一般に、檀家さん以外に、お坊さんは読経に来てもらえません。つまり、「一見さんお断り」という寺院も多いのです。
檀家離れが進んでいる近年では、寺院やお坊さんとお付き合いのない方も多いです。そうした場合には、「ご供養仕舞い専門業者」に依頼するか、「お坊さん手配・紹介サイト」などでお坊さんを探し、魂抜き・お性根抜きの依頼をしてください。
一般に、こうした閉眼供養でお坊さんにお渡しするお布施の相場金額は、1~5万円程度です。
お坊さんに、掛け軸の魂抜き・お性根抜きを行なってもらった後は、次のステップに移ります。
掛け軸の処分方法手順2:掛け軸をお焚き上げする
お焚きあげの仕方
魂抜き・お性根抜きを済ませた掛け軸は、「単なる巻物」になっています。そのため、ゴミとして扱っても法的には特に問題はありません。
ただ、仏さまやご先祖様の魂が宿っていた掛け軸を、ゴミとして捨ててしまうことは、なんとなく心が痛みます。そのため、一般的にはお焚き上げ(おたきあげ)などの焼却処分をします。
お焚きあげは、魂抜き・お性根抜きをお願いした寺院で行なってもらえる場合もあります。菩提寺のお坊さんに相談するか、可能な場合は自ら、焼却炉などで焼却されてもよいでしょう。
なお「全国送付対応の供養じまい専門業者」に依頼すると、掛け軸の魂抜き・お性根抜きからお焚き上げ(焼却処分)まで一式を行なってもらえます。費用は掛け軸1枚あたり一式5,000円~程度です。
全国送付対応の供養じまい専門業者はコチラ→https://reset-soul.com/ihai/
【掛け軸お焚き上げの例↓】
お焚きあげをする前に
ただ、一旦お焚きあげをしてしまうと、元の掛け軸そのものは再現できません。そのため、仏壇や位牌などの供養整理処分も含め、家族や親族と充分な話し合いをして、あとからトラブルが起きないよう、みなさん合意の上で、掛け軸の供養処分を進めることが大切です。
関連記事▶お位牌を供養処分する2つの方法