▼この記事を読んで得られる3つのこと
②よくあるトラブルの原因がわかる
③トラブル防止のための事前対策がわかる
はじめに:この記事の概要
面倒を見られなくなったり、お世話ができなくなったりしてやむなくお地蔵様を撤去・処分・移設~永代供養などの地蔵じまいをすることが増えてきています。
例えば、町内会の高齢化でお地蔵様の世話をする人がいなくなるという事例です。また、土地・不動産などの売買によりお地蔵さま及びお地蔵さまが設置されている祠(ほこら)を撤去しなければならないという事例も多いです。
今回はそうしたお地蔵じまいの際によく起こるトラブル実例を見ながら、事前防止策と具体的な地蔵じまいの方法を解説し、最後にチェックリストとしてまとめます。
1、地蔵じまいのよくある3大理由
お地蔵さまの仕舞いをしなければならなくなるよくある理由として大きく次の3パターンがあります。
地蔵じまいの3大理由
②土地・不動産の売買
③建設工事
それぞれを見ていきましょう。
①世話をする人がいなくなるパターン
主に町内会など近隣有志が管理やお世話をしている場合に多いです。管理人・世話人の高齢化によりお地蔵様の日々の面倒を見る人が誰もいなくなるパターンです。町内会で協議したうえ、そのままお地蔵さまを放置したままにするより、いっそ仕舞いをしたほうが良いという結論に達することがだんだんと増えてきています。
②土地・不動産の売買によるパターン
お地蔵様の設置場所の土地所有者がその土地・不動産を売却するケースです。この時、お地蔵さまが置いてあるままだと買い手が嫌がり売れなくなることが多いので、やむなく撤去するパターンです。ただし、地蔵撤去には近隣住民の反対がある場合が多いので対応が必要です。
③建設工事によるパターン
家屋・マンションの新設や建て替え、道路拡張などの建設工事により、お地蔵さまや祠を撤去する必要があるケースです。公共工事などで役所から移設場所を確保してもらえる場合はよいのですが、そうでない場合は地蔵を撤去処分したり移設する必要が出てきます。
以上が地蔵じまいをするよくある3大理由です。では次に実際に地蔵じまいをする際、よくあるトラブルについてみていきましょう。
2、よくあるトラブルの原因
お地蔵さまのほとんどは屋外にあります。そのため、屋内のものと違い所有者がはっきりしないことが多いです。例えば屋内にある仏壇や、完全に敷地内の庭にある石像(地蔵)は、持ち主がはっきりしています。逆に屋外にあるお地蔵様は、お世話をしている町内会やその管理者がその所有者であるとは限らないケースが多く、地蔵じまいの際にトラブルが起こりやすいのです。
よくある具体的なトラブルの原因は次の5パターンです。
トラブル5パターン
②地蔵所有者と設置場所の土地所有者が別
③地蔵所有者と世話人(管理者)が別
④地蔵と祠(ほこら)の所有者が別
⑤地蔵を「廃棄か移設か」で意見が分かれる
それぞれを見ていきましょう。
①地蔵の所有者が不明
お地蔵様の所有者が誰だかわからなかったり、所有者がすでに亡くなり継承者がいないかまたは継承者が不明だったりするケースです。こうしたケースでは、お地蔵さまを撤去処分する際に所有者の許可を得ることができません。
撤去処分した後、所有者が名乗り出て現れた場合にトラブルになることがあります。ただし、所有者がいないことがはっきりわかれば法的には「無主物」として扱うことができます。
②地蔵所有者と設置場所の土地所有者が別
お地蔵様の持ち主はわかっているが、そのお地蔵さまを設置している場所の土地所有者がお地蔵様の持ち主と別の場合です。土地所有者が自分の土地・不動産を売るために、勝手にお地蔵さまを処分した場合、トラブルになることがあります。たとえ自分の土地であっても、お地蔵様自体は持ち主が別だからです。
③地蔵所有者と世話人(管理者)が別
お地蔵様の持ち主ははっきりしており地蔵の撤去に同意しているが、日々の管理やお世話をしている人が地蔵の所有者とは別の場合です。例えば、管理しているのが町内会の人で、地蔵の所有者が別の地域の人などの場合です。地蔵所有者が土地を売りたいが町内会が反対する場合にトラブルが起こります。
④地蔵と祠(ほこら)の所有者が別
時々、地蔵の所有者と祠の所有者が違うこともあります。例えば、地蔵の所有者は個人で、祠は町内会の有志がお金を出し合って建てた(寄贈した)場合などです。双方が承諾しなければ地蔵や祠の同時撤去ができません。
⑤地蔵を「廃棄か移設か」で意見が分かれる
撤去した地蔵をどうするかで揉めることがあります。お地蔵様の姿が残らない廃棄処分にするのか、姿が残る移設永代供養をするのかで意見がまとまらないケースです。特に長年地域で愛されてきたお地蔵さまにはみんな愛着があるからです。
以上、よくあるトラブルについてみてきました。こうしたトラブルが起こらないような事前対策について次で解説します。
3、トラブル防止のための事前対策
トラブル防止のための事前対策には大きく以下の5つがあります。
5つのトラブル防止事前対策
②全員の承諾を得たうえで原則として地蔵所有者が仕舞いする
③世話人(管理者)の承諾を得たうえで地蔵所有者が仕舞いする
④祠の所有者(寄付者)の承諾を得たうえで地蔵所有者が仕舞いする
⑤地蔵の姿を残したい場合は寺院などに受け入れてもらう
それぞれについてみていきましょう。
①全員の承諾を得たうえで無主物として管理者が仕舞いする
地蔵の所有者が不明の場合は、地蔵に関わるすべての関係者の同意を得ます。そのうえで、現在地蔵を管理している人(町内会、不動産会社、建設会社など)が主体となって、地蔵じまいを実行します。関係各所の同意書を書面で得ておくと後でトラブルが起きても対応がしやすくなります。
②全員の承諾を得たうえで原則として地蔵所有者が仕舞いする
地蔵の所有者がはっきりしている場合であっても、地蔵に関わるすべての関係者の同意を得ておけば安心です。関係者とは地蔵所有者以外で、
・日々地蔵のお世話や管理をしている近隣・町内会の人
・祠の所有者・寄付者
・地蔵設置場所の土地・不動産所有者や管理者
などです。
そのうえで、現在地蔵を所有している本人が主体となって、地蔵じまいを実行します。関係各所の同意書を書面で得ておくと後でトラブルが起きても対応がしやすくなります。
③世話人(管理者)の承諾を得たうえで地蔵所有者が仕舞いする
地蔵の所有者と地蔵設置場所の土地所有者が同じ場合であっても、関係者に知らせずに勝手に地蔵を撤去するとトラブルになることがあります。お地蔵さまは地域の共同所有物(地域の守り神)という共有概念があるからです。
特に、日々地蔵のお世話や管理をしている近隣・町内会の人の同意を得ておく必要があります。まず町内会長さんなどに相談すればよいでしょう。
④祠の所有者(寄贈者)の承諾を得たうえで地蔵所有者が仕舞いする
地蔵の所有者と地蔵設置場所の土地所有者が同じ場合であっても、祠だけは所有者が別の場合もあります。町内会がお金を出し合って祠を建立し寄付(寄贈)しているパターンです。こうした場合も、寄付者である町内会の同意を得ておく必要があります。
祠が寄付などによって建立されている場合は、祠の裏側や横に寄付人一同の名前が書かれてあることが多いので(例:寄贈○○)一度確認してみましょう。または、町内会長さんなどに確認してみれば早いかもしれません。
⑤地蔵の姿を残したい場合は寺院などに受け入れてもらう
土地・不動産の売買などによって仕方なくお地蔵様の撤去自体には全関係者が同意した場合でも、地蔵を廃棄するか移設して姿を残すかで揉めることもあります。どうしても姿を残したい場合は、受け入れ先(寺院や霊園)を探してその寺院や霊園で永代供養や保管などをしてもらう必要があります。
ただし、近年ではお地蔵さまを受け入れしてくれる寺院はほとんどありませんので、お地蔵様の姿を残す選択はなかなか難しくなっているのが現実です。
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4、まとめ(事前チェックリスト)
以上、「地蔵じまいで事前に確認しておくべきこと」について解説しました。これらをチェックリストとして簡単にまとめると以下の様になります。
事前に確認すること、承諾を得る人チェックリスト
☑地蔵設置場所の土地所有者、土地提供者、土地貸与者(主に個人や不動産会社)
☑地蔵世話人(主に個人または町内会、近隣有志)
☑祠所有者または寄贈者(主に個人または町内会、近隣有志)
☑近隣住民(地蔵を地域の守り神として扱っている住民)
☑地蔵等設立発起人・備品類寄贈者
以上すべてを確認しておけば、トラブルが起きる確率はかなり減少すると思われます。なお、地蔵以外の石碑(慰霊碑)などはさらに事情が複雑なため、撤去にはより慎重になる必要があるので法律家に相談することがおすすめです。