前回は、「孤独死を発見したら最初にすること:慌てないための初期対応」について説明しました。孤独死を発見したら、まず生死を確認し、救急車や警察及び親族などに連絡をすることが、最初の対応になります。
そして、このような初期対応をしている間にも、死後数日経過している場合は、部屋から強烈な腐敗臭が周囲に漏れ出します。またウジが湧き、ハエが周囲を飛び回る悲惨な状況になります。近隣からは苦情が殺到し、すぐに対策をしなければ、どんどん腐敗臭とハエが拡散していきます。
【ハエは加速度的に増加します】
ただ、このような事態であっても、拡散防止の緊急対策方法を知っていれば、落ち着いて対応することができます。近隣からの苦情を最低限に抑えることが可能です。
そこで今回は、初期対応後の真っ先に行うべき緊急対策として、「腐敗臭(死臭)とハエの拡散防止の方法」について説明します。
近隣居住者への緊急対策とは?
家族が同居している場合の孤独死は、通常すぐに発見されるため、近隣に迷惑をかける事はそれほどありません。ただ、死後数日経って発見される孤独死の現場は、ワンルームマンションをはじめとする単身者向け住居が多く、腐敗臭(死臭)やハエなどが、近隣部屋に拡散しやすい状況にあります。
近隣居住者から苦情が殺到することが考えられますので、腐敗臭とハエの周囲への拡散防止が緊急の課題となります。
【マンションは緊急対策が大切】
さらに、孤独死の遺体搬出後も、室内に残された汚染物(主に体液や汚物)が独特の強い臭気を放ち続けます。遺体がなくなったからと言って、ほとんどの場合、悪臭が消えるわけではありません。また、ウジが湧き成虫となったハエが加速度的に増加し、室内だけならまだしも、周辺に拡散すれば止めることができません。
したがって、まず取るべき緊急対策とは、「1、腐敗臭(死臭)の拡散防止」「2、ウジとハエの拡散防止」の2点になります。この緊急急対策を行うことで、強烈な悪臭や害虫を一旦封じ込めることがかなりできます。
本格的な部屋の消臭対策などは、そのあと落ち着いてじっくり行えば問題ありません。
1、腐敗臭(死臭)の拡散防止
近隣からもっとも苦情が来る原因が臭いです。人が亡くなった場合の死臭と言われる腐敗臭は、主に人体の脂分が腐敗したものです。通常嗅いだことのない強烈な腐敗臭で、気分が悪くなります。
本格的な消臭を行う前に、まず臭いが周囲に漏れ出すのを防ぐことが第一にすべきことです。緊急に行うべき対策を以下に列挙します。
1、窓(サッシ)は閉めきってロックしておく
2、カーテンも閉める(窓に臭いが付着するのを極力防ぐため)
3、ただし、最上階などで周りに迷惑がかからない場合に限り、窓を開けておく
4、この場合、網戸は必ず閉めておく(ハエなどの出入り防止のため)。
5、玄関ドアの隙間(四辺と郵便受けの窓など)を、透明幅広セロテープや養生テープなどで
外側からすべてふさぐ。
5、換気扇はオフにしておく(他の部屋と配管がつながっている場合、臭いが拡散するため)
6、バス・トイレのドアは閉めておく(下水管などを伝って臭いが拡散するため)
7、すべての間仕切りドアや、押入れドアなどは閉めておく(薄い天板やその隙間から臭いが漏れ出したり、ハエが出入りするため)
なお、市販の香料の強い消臭剤や芳香剤を、室内や入り口に置くのはほとんど意味がありません。死臭と香料のニオイが混ざり、かえって悪臭が助長される場合があり逆効果です。市販の消臭剤を使用される場合は、無臭の置型タイプを玄関前に設置すると多少はマシです。
【市販の消臭剤はほとんど無意味】
近隣から悪臭の苦情が来た場合、多くの人は、なんとかすぐに消臭をしようとして、市販の消臭スプレーなどをまいたりします。しかし、室内の床やベッド・家具などに体液や汚物が付着して残っている限り、消臭剤はほとんど意味がありません。
まずは、臭いの拡散防止対策を行なった上で、本格的な部屋の消臭対策を行なってください。
2、ウジとハエの拡散防止
孤独死を発見した時に、ウジが湧いていたり、ハエが飛び回っていたりしたら、いろいろな対策や作業が困難になります。消臭対策をしたり、荷物を搬出したりするにしても、ドアや窓を開ける必要があります。
そのたびにハエが出入りすれば、どんどんと周囲に広がり、ますます苦情が殺到します。したがって、まず殺虫をすることが、次の対策を行う前の第一の緊急対策になります。
殺虫の緊急対策は以下の項目になります。
1、市販の殺虫スプレーを室内全体に噴霧する
2、ウジには直接噴霧する
3、その後、煙のでないバルサンタイプの殺虫剤を使用する
4、長期的には、吊り下げタイプの持続型殺虫剤(バポナ殺虫プレートなど)が有効
【殺虫スプレー】
【無煙型バルサンタイプ】
また、すでにマンション内(廊下など)にハエが飛び回っている場合は、その都度直接殺虫スプレーを噴霧します。ハエが卵を産み付け、成虫にかえるまでのサイクルは2週間と言われています。
室内の見えないところ(押し入れの隅など)に卵を産み付けている場合は、気付かないで殺虫剤が行き届かず、しばらくするとまた成虫であるハエが発生している場合があります。こうした場合は、少し気長に地道にやるしかありません。
とくにウジは早期に退治することが望ましいです。放っておくと加速度的に成虫にかえり増えていきます。
今回は、孤独死発見時の初期対応のあと、真っ先に行うべき緊急対策として、「腐敗臭(死臭)とハエの拡散防止の方法」について説明しました。
このような緊急対策のあと、部屋の片付けや本格的な消臭対策をスタートさせてください。なお、孤独死の部屋の消臭方法については、下記の記事を参照してください。
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