日本では超高齢社会と同時に多死社会が到来し、それにともない遺品整理をする人がどんどん増えてきています。そうした中、残された親族にとって悩みのタネが、遺品の中に仏壇や位牌がある場合です。
そのまま親族が引き取って継承する場合は問題ありません。ただ、継承できなかったり、面倒を見ることができなかったりする場合は、普通の家具などのようにポイッと粗大ゴミで捨てるわけにもいかないからです。
また、遺品整理の最中は、荷物の整理や遺品の選別でごった返しています。さらに、部屋の退去手続きや各種手続きで、てんやわんやの状態です。
【遺品整理中の部屋】
持ち家での遺品整理なら時間的余裕もありますが、賃貸住宅の場合は退去期限もあり、ゆっくりと構えていられません。このような中、お坊さんに仏壇供養のため、部屋に来ていただくこともけっこうな心理的負担になります。
ただ、心配する必要はありません。遺品整理の際の仏壇や位牌のご供養処分は、いくつかの方法があります。ごった返した遺品整理作業中の部屋の中で供養を行わない、という選択肢もあるのです。そこで今回は、「遺品整理における仏壇と位牌への対応:その供養や処分の方法」について解説します。
遺品としての仏壇は勝手に処分してもよいか?
一般の相続遺産と仏壇継承との違い
故人が残した仏壇や位牌を、親族が継承する場合は特に問題ありません。引き取って面倒を見ていけば済む話です。ただ、継承できなかったり、継承する者がいなかったりする場合は、処分するにあたり注意が必要です。
なぜなら、一般の遺品類と仏壇・位牌などは、相続に関して違いがあるからです。仏壇・仏具・位牌・神棚・神具・遺骨・墓地などは、まとめて「祭祀財産(さいしざいさん)」と呼ばれます。この祭祀財産の相続は、一般的な金品などの遺産とは切り離されて考えられています。
【仏壇や位牌は祭祀財産】
遺産相続人と祭祀財産承継者は、民法上は別になるのです。法律や遺言によって祭祀承継者として指定されると、仏壇やお墓を引き継いで、その後の祭祀(各種法要や墓参り、供養などの儀式)を行なう義務が生じます。
仏壇処分は誰の承諾が必要?
ただ、祭祀の義務は生じますが、その義務の履行自体が強制されるわけではありません。したがって、仏壇や位牌などについて継承できない場合は、その仏壇や位牌を処分するか否かも承継者に任されます。ひらたくいえば、仏壇などの祭祀財産を引き継いだ者が、自らの判断で勝手に処分してもよいということになります。
したがって、通常は親族が遺品整理とともに仏壇を処分することになりますので、特に問題はありません。仮に、賃貸住宅の大家さんやマンションオーナー・管理会社が、親族に代わって、部屋に残された仏壇の処分を委任された場合は、法的には祭祀財産承継者の承諾さえあればよいということになります。
多くの場合、遺産相続人と祭祀財産承継者は重複します。たとえば、故人の妻や長男などです。一般には、これら親族自らの判断または、親族に承諾を得てから仏壇の処分をすれば問題ないことになります。
遺品整理の際の仏壇処分の流れ
仏壇から魂・お性根を抜く
仏壇や位牌を処分するには、一般的には「魂抜き(たましいぬき)・お性根抜き(おしょうねぬき)」と呼ばれる、仏教状の儀式である法要を済ませてから廃棄処分または、お焚きあげをします。この法要の儀式は、お坊さんに依頼して読経していただくことになります。
【魂・お性根抜きの読経】
仏壇は一番初めに、お坊さんによって魂入れ(たましいいれ)や、お性根入れ(おしょうねいれ)または、それと同じ意味合いの読経等の仏教上の儀式を行っています。
仏様やご先祖様の魂(霊)が、この魂入れにより仏壇や位牌に宿ることにより、日々のご供養や感謝の対象になるのです。したがって、仏壇を処分するにあたり、まずは「魂・お性根を抜く」という儀式を行う必要があります。
注)浄土真宗にはこの魂・お性根抜きという概念がありませんが、代わりに遷座供養(せんざくよう)という読経を行います。
魂・お性根抜き法要の2つの方法
遺品整理の部屋に残された仏壇の、魂・お性根抜きをしてもらうには、2つの方法があります。1つ目が、お坊さんに直接部屋まで来ていただいて法要を行なってもらう方法です。
そして2つ目が、「仏壇の供養整理業者」や「ご供養仕舞い専門業者」に依頼して、仏壇をまず回収に来てもらい、一旦部屋から搬出し、専門業者の供養場など別の場所で、魂・お性根抜き法要を行なう方法です。
遺品整理をしている部屋が片付いていて、お坊さんに入室していただくことに失礼がない場合は、1つ目の「直接部屋まで来ていただいて供養をしてもらう方法」がベターです。親族の目の前で読経してもらえるので安心です。
【お坊さんに供養を依頼する】
お坊さんに部屋に来ていただく環境にない場合は、2つ目の「専門業者に回収してもらう方法」が負担や手間がありません。部屋が片付いていない、汚れている、悪臭がするなど、法要を行う環境や条件が揃わない場合は、お坊さんを呼んでも失礼にあたるからです。
どちらを選択するかは、親族の意向にもよりますし、部屋の環境や条件にもよりますので、充分考慮や相談が必要です。
お坊さんに部屋に来てもらう方法
魂・お性根抜き法要に来ていただくために、お坊さんに依頼します。お坊さんとお付き合いがある場合は、事情を説明し、部屋に残された仏壇の供養を直接依頼します。
ただ、寺院やお坊さんとお付き合いのない方も多いのが現実です。その場合は、「仏壇整理専門業者」や「ご供養仕舞い専門業者」にお坊さんの手配を依頼するか、「お坊さん手配・紹介サイト」などで自らお坊さんを探し、魂・お性根抜きを依頼してください。
お坊さんに来ていただいて法要をお願いする場合の費用の相場(お布施額)は、3万5千円~5万円程度です。お坊さんには、遺品整理中の部屋である旨を伝えてください。部屋に荷物が散乱していることもあったりするので、あらかじめ了承を得ておくことがマナーです。
【お坊さんにお布施を渡す】
仏壇を廃棄する
お坊さんに来ていただいて、魂・お性根抜きを済ませた仏壇は、ただのモノになります。お坊さんがそのまま持ち帰って処分して頂ける場合はそれで完了となります。「仏壇整理専門業者」や「ご供養仕舞い専門業者」にお坊さん手配を依頼した場合も、そのまま回収して処分してもらうこともできます。
仏壇本体を自分自身で廃棄する場合は、法律上は一般廃棄物(ゴミ)となります。ただし、仏壇を粗大ごみとして引き取ってくれない自治体もあります。
【ゴミ置き場】
実際に仏壇を粗大ごみとして引き取ってもらえるかどうかは、各自治体のゴミ処分担当部署に問い合わせてください。(各市町村の環境課とか生活環境課とかの窓口です) ゴミ回収作業員の宗教上の理由等で、回収を拒否される場合もあります。必ず事前に確認してください。
自治体のゴミ回収には、
・定期回収日に、指定のゴミ置き場に回収に来てもらう
・臨時ゴミとして、自宅まで回収に来てもらう
・自治体運営の焼却場へ自分で持ち込む
などの方法がありますので、ご自身で可能な方法を選んでください。
一式を専門業者に依頼する方法
お坊さんに部屋に来ていただく環境にない場合は、2つ目の「仏壇整理専門業者」や「ご供養仕舞い専門業者」に依頼するという方法があります。この場合、仏壇をまず部屋に回収に来てもらい搬出し、専門業者の供養場など別の場所へ移動させたあと、魂・お性根抜き法要を行なう方法です。
【専門業者による仏壇搬出】
部屋にお坊さんを呼べない場合はもちろん、「自分で仏壇を処分できない・やりたくない・頼めるお坊さんが見つからない」という場合についても、この2つ目の方法を利用できます。魂・お性根抜きから仏壇の処分まで一式を行なってもらえます。
今回は、「遺品整理における仏壇への対応:その供養や処分の方法について」について解説しました。ポイントをまとめると、仏壇を処分するにあたり、祭祀財産承継者の承諾を得ること、部屋の環境によりお坊さんに来てもらうか否かを決めること、の2点になります。
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