日本では、超高齢化により多死社会が訪れています。それに伴い、2000年ころから遺品の整理をする人が急増してきました。ひとり暮らしの老人が亡くなった後の遺品整理が最も多く、残された親族もその荷物の多さに困っているというのが実情です。
また、急激な遺品整理需要もあって、専門業者もたくさん増えています。業者に依頼すれば自ら手を煩わさずに荷物整理は終わります。しかし、けっこう費用がかかることや、業者によるサービス品質のばらつき、また想い出の遺品を他人に見られたり触らせたりしたくない人も多いことから、親族だけで遺品などの荷物整理を希望する人もいます。
とはいえ、実際に親族だけで遺品整理や部屋の片付けを始めたはいいが、あまりの荷物の多さに途中でめげてしまう人も多いのです。
【遺品が残された室内】
ただ、心配する必要はありません。今回は、親族だけでも最後までできるよう、「遺品整理の仕方、5ステップ」について解説します。
遺品整理の内容と、準備
遺品整理の2大要素
遺品整理の内容は大きく分けると、以下の2つの要素に分解できます。
故人や故人の部屋に残されたたくさんの荷物(遺品類)に対し、
1、必要なものや思い出のものを仕分けして確保する
2、それ以外のものをリサイクルしたり、廃棄処分したりする
たったこの2つの要素、すなわち、「必要なものを選別する」と「不要なものを処分する」に分解できます。現実的には、残された大量の荷物を前に途方にくれてしまうかもしれませんが、内容的にはこの2つのことを実行に移すだけです。
【遺品類の仕分け】
まずは、1の「必要なものや思い出のものを仕分けして確保する」だけでも自分たちで済ませると、気持ちが楽になります。なぜなら、それ以降の作業については最終手段として、専門業者や廃棄物処理業者に依頼することもできるからです。
つまり、2大要素のうち、まずは1つ目を実行することがキモになります。
遺品整理をする前の準備
実際に部屋の中の荷物を、親族など自分たちだけで整理する場合、以下のことを事前準備しておけばとてもスムースに事が運びます。
1、ダンボール箱、ゴミ袋、梱包テープ、梱包ロープなどの仕訳梱包材
2、手押し台車(特にマンションなど集合住宅の場合)
3、ドライバー・ペンチなどの道具類
4、作業用手袋や作業服、マスクなど
5、トラックやワゴン車などの運搬車(必要な物やゴミなどを自分たちで運搬する場合)
6、近隣へのあいさつ(作業中迷惑をかけることへの事前了承)
7、リサイクルショップや骨董品屋などのチェック(持ち込みや出張査定をしてもらいます)
8、処分業者のチェック(回収に来てもらいます)
9、電気、ガス、電話などを止める場合の連絡先チェックと手配
10、賃貸住宅の場合、退去手続きの手配
【ダンボールなどの仕分け梱包材や道具類】
遺品整理の仕方、5ステップ
実際の現場作業の流れは、大きく次の5ステップになります。
ステップ1:想い出の遺品類(形見品)の仕分け
想い出のもの、必要なものや重要なものを仕分けして確保する
ステップ2:リサイクル可能なものの仕分け
残った不要なものの内、リサイクルや資源再利用可能なものを仕分けする
ステップ3:ゴミの分別
残った不要なもの(ゴミ)を、燃えるもの・燃えないものなどに分別する
ステップ4:分別したゴミを処分する
分別したゴミをそれぞれ廃棄処分する
ステップ5:家屋・部屋の各種手続きや処理を済ませる
清掃や原状回復・リフォームなどをして、退去や売却等の手続きをする
では、1つずつ見ていきましょう
ステップ1:必要なものや思い出のものを仕分けして確保する
まずは、絶対に捨てられない故人の思い出の品(形見の品など)を選別確保しましょう。思い出の品の他に、貴重品や重要なものなどを仕分けして取り分けておきます。
具体的には、形見の品、現金、通帳、印鑑、有価証券、写真アルバム類、宝石貴金属類、各種契約書類などがあります。形見の品は人によってそれずれ違いますので、自分自身や家族の判断が必要です。
【形見品の選別】
「必要なもの専用ダンボール箱」を作り、そこに入れていくようにします。箱には必ず「必要品」や「形見品」などとマジックインキで書いておきましょう。または、紙に書いて直接貼り付けます。こうすることで、まちがって誰かが勝手に処分できないようにしておきます。
形見品や重要なものは、一旦廃棄処分してしまうと、取り返しがつきませんから注意が必要です。遺品整理を業者に依頼する場合には、特に気をつけておきましょう。
【必要品入れ専用箱】
ステップ2:リサイクル可能なものの仕分け
思い出の品、形見品、貴重品や重要なものなどを選別確保したあとは、次にリサイクルや資源再利用可能なものを仕分けます。具体的には以下のようなものがあります。
・リサイクル家電
テレビ・エアコン・冷蔵庫・洗濯機・パソコンなどはリサイクル家電と呼ばれます。製造日から5年以内であれば買取価格がついてリサイクルショップなどが買い取ってくれます。ただ、5年以上経過した、テレビ・エアコン・冷蔵庫・洗濯機・パソコンなどは、一般に買取り価格は付きませんから、法令に従ってリサイクル処理が必要になります。
【リサイクル家電の例:エアコン】
・一般家電製品
一般家電製品で、製造日から5年以内のものなら、リサイクルショップなどに買い取ってもらうことができます。
・一般金属類
鉄及び非鉄金属(銅、アルミ、真鍮、ステンレスなど)については買取り市場があります。鍋、釜など、仕分けをきちんとすれば家屋内に金属類は想像以上の量が存在します。
・家具類
特に婚礼家具や食器棚などの高級家具、また電話台などの小物家具は買取り市場があります。一般的な汎用家具はほとんど買取価格がつきません。
・古紙
新聞、雑誌、書籍などは古紙回収業者の無料回収や持ち込みなどがあります。
・古布
下着などの綿製の古布は、ウエスとして古紙回収業者の無料回収などがあります。
・衣類
着物、ブランド服は専門業者の買取り市場があります。
・プラスティック類
廃プラの受け入れ市場があります。買取り価格はほとんどの場合付きませんが、無料で引き取ってもらえる場合が多く、廃棄処分代が不要です。
以上のリサイクル可能なものについては、自らヤフーオークションなどで販売するか、リサイクル専門業者に買い取り、もしくは無料引き取りをしてもらいます。
ステップ3:ゴミの分別
必要なものとリサイクル品を選別したあとは、不要なものだけが残ります。この不要なもの(ごみ)を廃棄処分するために、分別をします。廃棄処分を業者に依頼する場合は、それほど気にする必要はありません。ただ、ゴミを自ら自治体の焼却場に持ち込んだり、自治体の臨時ゴミ回収制度を利用したりする場合は、キチンと分別が必要です。
自治体にもよりますが、多くは以下のようなゴミ分別のパターンがあります。
・燃えるもの
売れない家具類、紙類、革製品、化学製品(ビニールなど)、その他雑品
・燃えないもの
食器(瀬戸物)、植木鉢、金属類、その他不燃雑品
・粗大ごみ
家具、一般家電類、
・一般廃棄物に出せないもの(自治体により変わります)
ブロック、コンクリートがら、土(植木鉢の中)、金庫、消化器などは、専門の業者に引き取ってもらいます。
【自治体ごとに分別方法が変わります】
以上のように細かく仕分けることにより、より効率的、経済的に整理分別処分や、処理をすることができます。
ステップ4:分別したゴミを処分する
分別したゴミをそれぞれ廃棄処分します。ゴミは各自治体の焼却場へ自ら直接持ち込むか、自治体指定の、一般廃棄物収集運搬業者に臨時ゴミ回収に来てもらいます。
この方法については、各自治体(市町村)のゴミ回収担当窓口に問い合わせてください。自治体ごとにシステムが違い、臨時ゴミ回収などを取り扱っていない市町村もあります。
また自治体が回収していないものについては、それぞれ専門の回収業者(産業廃棄物収集運搬業者など)へ渡します。
ステップ5:家屋・部屋の各種手続きや処理を済ませる
部屋の中の遺品類や荷物がすべて片付いたら、賃貸住宅の場合は、清掃や原状回復をして、退去等の手続きをします。公営住宅の場合は各市町村の担当窓口へ、民間住宅の場合は不動産会社か大家さんへ連絡をして、退去手続きについて進めます。
また、持ち家で売却や誰かに賃貸する場合は、不動産会社に相談します。リフォームなどが必要な場合もあり、専門家のアドバイスが必要になるでしょう。
ここまで、遺品整理の仕方を大きく5ステップに分けて説明しました。部屋の片付けそのものは、どれくらいの時間がかかるのかといいますと、人員と荷物量にもよります。専門業者の場合、目安として、3DK(4部屋)の広さで4名✕1日ですべての作業が終了します。
親族だけで済ませる場合は、もう少し時間がかかるでしょう。なるべく余裕を持って進めてください。
仏壇などの祭祀財産はどうすればいいか?
仏壇は遺産相続とは別の財産
遺品整理をする際、多くの人が仏壇や位牌をどうすればいいのか悩みます。そのまま親族が継承する場合はあまり問題ありません。ただ、継承できなかったり、継承する者がいなかったりする場合は、一般の家具などのようにポイッとゴミで捨てるわけにはいかないからです。
仏壇・仏具・位牌・神棚・神具・遺骨・墓地などは、まとめて「祭祀財産(さいしざいさん)」と呼ばれます。この祭祀財産の相続は、一般的な金品などの遺産とは切り離されて考えられています。
【仏壇や位牌は祭祀財産】
遺産相続人と祭祀財産承継者は、民法上は別になるのです。法律や遺言によって祭祀承継者として指定されると、仏壇やお墓を引き継いで、その後の祭祀(各種法要や墓参り、供養などの儀式)を行なう義務が生じます。
ただ、義務は生じますが、その義務の履行自体が強制されるわけではありません。したがって、仏壇や位牌などについて継承できない場合は、その仏壇や位牌そのものの処分も承継者に任されます。ひらたくいえば、引き継いだ者が勝手に処分しても問題ないということになります。
仏壇や位牌の処分は?
仏壇や位牌を処分するには、魂・お性根抜きなどの仏教状の儀式(法要)を済ませてから廃棄します。この法要はお坊さんに依頼することになります。
以上、今回は、「初めてでもできる遺品整理の仕方5ステップ」について説明しました。時間に余裕のある人や親族で協力体制を組める人は、この5ステップに従って行えば、ゆっくりでも進められると思います。
自分たちでできない、やりたくないという人は、遺品整理や後見整理の専門業者に依頼するという選択肢もあります。この場合は、たくさんの業者があります。高い安いという料金だけではなく、サービスの品質や担当者との相性なども考慮しながら業者選びをすることをおすすめします。
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