各種建設工事や建築工事の際、現場内にお地蔵様が祀られている場合があります。工事を進めるに当たり支障になる場合は、お地蔵様を移設したり撤去したりする必要があります。
一時的に移設する、永久に移設する、移設せず処分してしまう、など現場の条件や工期などにより対応は変わってきます。
【工事現場内のお地蔵様の例↓】
今回は、「お地蔵様が工事現場敷地内にある場合の移設の手順と供養方法」について解説します。
工事現場内にあるお地蔵様への3つの対応方法
工事現場内にお地蔵様があり、工事の支障になる場合、状況により次の3パターンの対応があります。
パターン2、お地蔵様を別の場所へ永久に移設する
パターン3、お地蔵様を撤去処分する
それぞれについて見ていきます。
パターン1、一時的にお地蔵様を移設する
工事の支障となる期間のみお地蔵様を別の場所に移設します。そして、工事が終了すればもとの位置に戻すパターンです。
こうした場合、移設場所は、同じ工事現場内の別の場所や、近所の寺院に預かってもらうという方法があります。近隣住民や町内会の人が日々お参りしている場合などは、トラブルを防止するため、できるだけ近くに一時移設するのが良いでしょう。
【町内会で面倒を見ているお地蔵様の例↓】
一時移設の手順
一時移設の手順は以下の流れになります。
手順2:お地蔵様の閉眼供養(魂抜き)をする
手順3:お地蔵様や祠(ほこら)を移設する
手順4:移設後、お地蔵様の開眼供養(魂入れ)をする
手順5:工事終了後もとに戻す場合は、上記2~4を再度行う
手順1:近隣住民や関係者の合意を得る
工事現場内のお地蔵様であっても、そのお地蔵様の所有者が必ずしも施主や工事発注者のものとは限りません。よくあるパターンは「町内会が所有者」の場合です。町内会がお地蔵様の設置場所として工事現場内の土地の一部を借りている場合です。
【設置場所が個人の敷地内だが道路に面している例↓】
この場合は、お地蔵様の移設等に関して町内会の合意を得るようにします。また、移設先については、引き続き近隣住民がお参りできるようできるだけ近くにすることが望ましいでしょう。
近隣の方々のお地蔵様への思い入れは、想像以上に大きい場合もあるからです。お地蔵様は「町内会の守護神」という意識が高いからです。まずは、実際にお世話をしている近隣住民や町内会長などに相談することが大切です。
手順2:お地蔵様の閉眼供養(魂抜き)をする
お地蔵様を移設する場合、原則的には閉眼供養と呼ばれる魂抜きの儀式を行います。同じ敷地内で少しの移動でそれほど気にしない、あるいは費用を抑えたいという場合は、魂抜きをせずに移動することもあります。
ただ、原則としてこの儀式は行ったほうが仏教的には良いとされています。また、近隣住民に安心・納得してもらうという観点からも、こうした儀式は必要になってきます。
この供養はお坊さんにきてもらって読経していただきます。工事関係者はもちろん、近隣住民や町内会の方などにもお声がけして参加してもらうことがベストです。
【工事現場のお地蔵様の魂抜き閉眼供養の例↓】
手順3:お地蔵様や祠(ほこら)を移設する
魂抜きを終えたお地蔵様は「タダの石像」になりますので、移動が可能になります。同じ工事現場内の別の場所か、近所の受け入れ可能な寺院などへ一時移設をします。
できるだけ祠(ほこら)も一緒に移設して、戻したときに再利用できるようにします。工事現場内の移設場所には仮設の台座が必要になることもあります。
手順4:移設後、お地蔵様の開眼供養(魂入れ)をする
お地蔵様や祠を移設したら、あらためて開眼(かいげん)供養と呼ばれる魂入れの儀式を行います。魂抜きと同様、お坊さんに読経を行っていただきます。
工事期間中、仮の場所で引き続き近隣の方々にお地蔵様の供養を行っていただく事が前提です。
なお、工事期間中お地蔵様のお世話をしない場合はあえて魂入れを行わず、工事終了後まで魂を抜いたまま保管しておきます。
手順5:工事終了後もとに戻す場合は、上記2~4を再度行う
工事が終了してお地蔵様をもとに戻す場合は、上記2~4の手順を再度繰り返します。最初の移設時に魂入れを行わずに保管している場合は、上記手順4のみを行います。
このときもまた、近隣住民や町内会の方々に参加してもらうようにすることが、トラブルなく進めるために必要な近隣対策となります。
【近隣住民などに供養に参加してもらっている例↓】
パターン2、お地蔵様を別の場所へ永久に移設する
パターン2として、お地蔵様をもとに戻さず、別の場所へ永久に移設する場合の手順です。
手順2:近隣住民や関係者の合意を得る
手順3:お地蔵様の閉眼供養(魂抜き)をする
手順4:お地蔵様や祠(ほこら)を移設する
手順5:移設後、お地蔵様の開眼供養(魂入れ)をする
手順1:移設受け入れ先を探す
まず移設先を探します。近くで設置可能なスペースが確保できる場合は、近隣住民が引き続きお参りできるのでそれが一番良いでしょう。
また、近くでスペースが確保できない場合は、近隣の寺院で受け入れ可能なところを探します。そう多くはありませんが、いくつかの寺院ではお布施さえ払えば引き取って、永代供養をしてくれるところもあります。
【地蔵受け入れ先を探す】
手順2~5:閉眼供養~移設~開眼供養
受け入れ先が決定すれば、パターン1と同様に手順2~5を行います。移設先に対しての近隣住民の合意が難しい場合もありますが、そこをクリアすればあとは比較的スムーズに進むでしょう。
パターン3、お地蔵様を処分する
仮移設もせずまた、寺院などの受け入れ先もない場合は、お地蔵様を撤去処分します。以下のような手順になります。
手順2:お地蔵様の閉眼供養(魂抜き)をする
手順3:お地蔵様や祠(ほこら)を撤去処分する
手順1:近隣住民や関係者の合意を得る
お地蔵様を移設せず撤去処分する、つまりお地蔵様がその地域から失くなるわけですから、移設に比べてより近隣住民の合意が必要になってきます。
ただ、住民の高齢化により、お地蔵様の面倒を見る人もだんだんといなくなってきており、比較的合意を得られやすい時代となっています。近隣住民と十分コンセンサスを取った上でお地蔵様の撤去をするようにしましょう。
手順2~3:お地蔵様の閉眼供養をして撤去処分する
パターン1・2と同様に、お地蔵様の閉眼供養(魂抜き)をします。魂を抜いたお地蔵様は単なる石像になり、撤去や処分が可能になります。
ただ、魂を抜いたお地蔵様であっても撤去や処分を嫌がる人も多いです。そうした場合、お坊さんの手配から魂抜き~撤去処分までを一式行ってくれる地蔵じまいの専門業者もあります。
お地蔵様じまいの専門業者サイトはこちら⇒https://reset-soul.com/useful/jizou/
まとめ
お地蔵様は仏像の一種です。ただ、日本古来からの自然崇拝の神様と合体したような意味合いもあります。つまり、地域の守り神的な捉え方をする人が多く、そうした人たちの心情に配慮した対応が必要になります。
工事を施工するに当たっては、こうした近隣住民や町内会の方々と十分な合意を経ることが、トラブルを防止する最善策となります。