私たちは若い頃には、自分がいつか死ぬという現実を深く考えることはほとんどありません。しかし、人生を折り返し後半戦に入ったあたりから、誰しもが少しずつ人生の終わりを意識し始めます。
また、親しかった人や大切な人を失った場合にも、「死」を現実に起こるものとしてとらえるようになります。そしてようやく私たちは、残りの人生を「いかにより良く生きるべきか?」「家族に迷惑をかけないためにはどうすればいいか?」「そのためには何をするべきなのか?」を真剣に考えるようになっていきます。
「終活」とは、これら人生の課題に少なからず解決策を与えてくれるものです。以下では、「終活とは何か?:失敗しない終活3つのポイント」について解説します。
終活とは何か?
終活の定義
「終わり」の「活動」と書いて「終活」です。なんとなく暗くてマイナスなイメージを持ってしまいます。この「終活」という言葉、もともとは2009年に週刊朝日が造った造語で、自分のお墓や葬式など人生の終わりに向けての準備活動のことを意味しました。
ただ、その後「終活」という言葉には、これら準備活動に加え、「人生をより良く生きるためにどうするのか?を考えるための活動」という意味がプラスされて捉えられるようになってきています。
終活を行なう意味とは?
世の中には「◯〇活」と言われるたくさんの造語があります。たとえば、就職するための活動を「就活」、結婚するための活動を「婚活」、妊娠するための活動を「妊活」などと呼びます。
いずれの「◯◯活」も人生をより良く生きるための活動です。人生を楽しみ、充実したものにするために行なうものです。だれでも幸せな人生を送りたいと思っているからこそ、このような活動をするのです。
一方、終わりの活動と書く「終活」の方は、ちょっとマイナスイメージです。人生の終わりかけにしようがなく「ああ~、やっておかないといけないな~」みたいなイメージを持ってしまいがちです。
しかし、「終活」だって、「就活」「婚活」「妊活」などと同じように、私たちがよりよい人生を送るために行なうものです。現実的には、面倒ですがやらなくてはならないことが「終活」にはたくさんあります。ただ、終活を行なうほんとうの意義は、「自分が幸せな人生を送るため」です。
「終活」を行なうことによって、あらためてあなたの人生を見直し、考えるよいきっかけになるのです。
終活の3大メリット
実際に終活を始めると煩わしさがあります。面倒です。けっこう大変です。ただ、それにも増して次のようなメリットがあります。
1、問題点が把握でき、将来的なトラブルを回避できる
2、家族と一体感が生まれ意思疎通を図れる
3、限りある人生に目的を持つことができ、より充実あるものにできる
実際に問題が発生してからでは、よけいに面倒でわずらわしくなってしまいす。終活に限らずどのようなことでも、事前に準備をしているだけで心に余裕も生まれます。
また、家族と相談をすることにより、それまであまり真剣に考えなかったお互いの死について深く意思疎通を図ることができます。
そして何より「あなたがあなたの人生についていかに生きるべきか?」をこれまでになく考えるようになります。じつは、このことが終活を始める最大のメリットであると思います。
終活を始める時期はいつがよいか?
終活を始める時期は、人それぞれの考え方や置かれている環境によっても違います。ただ、「先は長い、まだまだ死なない」と思っているうちに始めるのがベストです。あくまで「終活」は準備活動なので、死ぬとわかってから始めても「時すでに遅し」です。
そうなってからあわてて始めても完全に準備しきれません。たとえば取り返しの付かないような病気になってから健康管理を始めても遅いのと同じです。「終活」とは、いわば人間ドックみたいなものです。「終活」は、あなたが幸せな人生を送るための「準備活動」であり、「予防検診」のようなものです。年齢にとらわれず早めに少しずつ始めていくことがおすすめです。
終活にはどんなものがあるか?
終活の目的別分類
終活には、その目的別に大きく以下の3つに分けることができます。
▶A:家族のために行なうこと
あなたが生きている間に家族や親族に迷惑をかけないよう、またあなたの死後、迷惑がかからないように準備しておくことです。
たとえば、生きている間であれば介護・入院・保険・収入のこと、死後であれば葬儀・相続遺言・お墓のことなどに関する準備活動です。
▶B:自分のために行なうこと
あなたの残りの人生を、よりハッピーに、より充実したものにしていくかを見つめ直し実行していくための活動です。たとえば、仕事・趣味・仲間・夢・生きた証などをどうするのかを考えることがスタートです。
▶C:親のために行なうこと
通常、親はあなたより先に天国に旅立ちます。つまり、自分の人生を考えつつも親の面倒も見なくてはなりません。親のために行なうことは、自分がその立場になった時に役立ちます。たとえば、介護・病院・施設・ホーム・葬儀・お墓・相続・遺品整理のことなどです。あなたがもし自分の時にはどうしたいのかを考えながら進めるとよいでしょう。
実際にあなたが終活を始める場合、上記A.B.Cのうち、誰のために行っているのかを考えながら行なうと頭の整理がつき、目的も明確になりやる気も出てくるでしょう。
一般的な終活の種類
一般に、本来の意味での「終活」と呼ばれている活動には、おおまかに以下の様なものがあります。
エンディングノートの作成
まず初めに、エンディングノートを作成することで頭の整理ができます。そして、あなたにとって何が大切で何を優先すべきか?が明確になるはずです。
葬式の準備
葬儀はどこでどのような形式で行うか?あるいは葬儀はしないか?だれに連絡するか?
お墓の準備
遺骨はどうする?お墓に入れる?散骨する?合同納骨する?持っておく?
保険
生きている間の入院保険や、死後の生命保険をどうするか?
相続・遺言書の作成
遺言書の作成、死後の意志を伝える手段を考える
介護・施設・ホームの準備
認知症や要介護の身になった場合、お金のこと・介護施設やホームはどうするか?
病院・病気対策
病気になった場合、お金のこと・手術や緩和ケアに対する意思表示はどうするか?
生前荷物整理・遺品整理対策
持ち物の整理はどうするか?生前に行なっておく?死後にまとめて家族に任せる?
祭祀(さいし)財産整理(仏壇・位牌の供養整理、墓じまい)対策
先祖代々の仏壇・位牌などはどうするか?継承する?供養整理~処分する?
上記の中でも、最低限でもやっておいたほうがよいと思う「始めの第一歩:おすすめ終活」は、
エンディングノートの作成です。これだけならなんとなくできそうです。そして、このエンディングノートを作成することで、いろいろな問題点ややるべきことが見えてきます。ぜひ終活の手始めとしてやってみてください。
終活を行なうための「失敗しないポイント」
いざ終活を始めてみると、やることが多くて嫌になってしまいます。そこで、終活を行なうための「失敗しないポイント」を3つ以下にまとめてみました。
1、焦らない
少しずつこつこつ行ないましょう。数年計画でもオッケーです。毎年一項目でもよいのでちょっとずつ進めていきましょう。
2、家族や専門家・カウンセラーに相談する
自分一人でやっていると挫折してしまいがちです。特に法律的なことが絡む相続などのことになると、よくわからなくなりストップしてしまいます。必要に応じ、家族や専門家・カウンセラー・経験者などに相談すると一気に解決することがたくさんあります。
3、宗教観や宗教儀式など、従来の常識や固定概念にとらわれない
「うちは先祖代々、仏教徒でこういうしきたりがあるから、こうしなければならない」と考えている人が多いのも現実です。ただ、世の中はどんどんと変化しています。お墓にしても現在ではたくさんの種類や形態のお墓があり、あなたの環境や経済状況によっていろいろな選択肢があります。従来の常識や固定概念にとらわれずに考えてみるのもよいでしょう。
まとめ
終活には目的別に3つのパターンがあることをお伝えしました。
A:家族のために行なうこと
B:自分のために行なうこと
C:親のために行なうこと
の3つです。
ただ、やはりあなたの人生はあなたのためのものです。家族や親のためを思って行なう「終活」は非常に尊いことではあります。しかし、もしそれであなた自身が幸せになれないのであれば、「終活」に意味はなさなくなるのではないかと思います。最終的にはあなたが幸せになれるための「終活」を行なうことをお勧めします。