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位牌を作って戒名をつける必要はあるか?

「亡くなった親につけるたった何文字かの戒名料に、なんで数十万円も払わなくてはならないの?」と理不尽に思っている人も多いと思います。

私の実家でも、祖父母や父親がなくなった際の葬儀で、戒名料込みで30万円程度をお布施としてお坊さんに支払った記憶があります。

当時はまだ、「2日で30万か~!えらい高い。でもまあそんなものなのかな~」という程度でした。この金額は、お坊さんから葬儀屋さん経由で伝えられたものです。「仏教の世界ってそんなシステムになっているのだな」と思っていました。

しかし、よくよく考えてみると、一般のサラリーマンが丸々1ヶ月間朝から晩まで一生懸命働いて得た給料と同じくらいの報酬が、たった数文字の戒名料にほとんど一瞬で消えてゆくのです。普通に考えたらちょっと変なはなしです。坊主丸儲けと云われるゆえんです。

【高額な戒名料という名のお布施】

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実は、戒名は絶対に必要なわけではありませんし、また自分でつけることもできるのです。今回は、位牌や戒名の本来の意味を理解し、「位牌を作って戒名をつける必要は本当にあるのか?」について、みなさんがご自身で判断~選択できるよう解説していきます。

位牌とは何か?

位牌の意味とは?

仏壇の中に、黒い縦長の板状のものがあると思います。家系の名前や故人の名前が書かれています。これが位牌です。高さが50cmを超える大きなものから10cmより小さいものまでいろいろなサイズのものがあります。
【本位牌】

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位牌とは、「家の継承と家の継続への思い」を形に現したもので、先祖の霊魂を祀る(まつる)木製のものです。紙製の位牌もたまに見かけます。

そして位牌には、「故人や先祖の魂が宿っている」と言う考えのもと、日々ご供養をし、また感謝の気持ちを故人や先祖に伝える対象になっています。お墓参りを、家でできる代替品といえるかもしれません。

位牌と言う名称の語源は、霊魂をいつき祀る(まつる)「斎木(いはひき)」というものであり、この「斎ひ祀る(いはいまつる)」から「いはい」という名称になったということです。

位牌の種類

位牌はまず大きく2種類に別れます。一つがお仏壇の中でよく見かける黒い位牌です。もう一つが、葬儀やその後の初期の仏事に使用される白い位牌「白木の位牌」です。

白木の位牌は、親族が亡くなり急遽作った仮の位牌です。一方黒い位牌は、葬儀など一連の儀式が終わったあと、本格的に作った「本位牌」、つまり正式な位牌ということになります。
【白木位牌(左)と本位牌(右)】

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黒い本位牌には、一枚物の板状のものと、「先祖や故人の名前が記された札」が何枚も中に納めることのできる箱型の「繰り出し位牌」というものに、大きく2種類に分けられます。
【繰り出し位牌】

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仮の位牌である白木の位牌は、葬儀から四十九日まで一通りの儀式が済んだあと、黒塗りの本位牌に作り変えます。そして、もとの白木の位牌は処分します。このとき、白木の位牌から魂を抜いて、黒塗りの本位牌に魂を移し替えて入れます。

このように魂を抜く儀式を多くの宗派では「閉眼(へいがん)供養」、また魂を入れる儀式を「開眼(かいげん)供養」といいます。なお、浄土真宗では「魂」という概念がありません。

確かに、浄土真宗では「魂抜き」「魂入れ」は行われませんが、代わりにそれぞれ「遷座(せんざ)供養」「入仏(にゅうぶつ)供養などの儀式をします。(呼び方は浄土真宗内でもいろいろあります。)ただ、浄土真宗では位牌を作らず過去帳を代わりとする門徒さんも多いようです。

戒名とは何か?

戒名のルーツ

次に戒名についてです。どの種類の位牌にも名前が書かれています。一般的には、表面に戒名、裏面に俗名(生前名)と没年です。戒名とは、平たくいえばお坊さんに授けてもらった名前のことです。

現代の戒名のルーツは、親族が亡くなったその日に、僧侶に依頼して菩薩戒(ぼさつかい)を唱えてもらうことに由来します。菩薩戒とはお経のようなものと考えて下さい。

戎を受けることにより、仏弟子すなわち出家者になる。そこで出家者としての名前が与えられる。これが戒名であり、戒名を授ける日本の習慣はここから始まったとされています。(宗派によりこの考えは変わります)

戒名の本来の意味

本来は、亡くなってからではなく、生前に仏教に帰依し戒律を守ることを誓った者に与えられる、仏教徒としての名前を戒名といいます。「帰依する」とは「拠り所にする、すがる、信者になる」ということです。

また、ここでいう守るべき仏教の基本的な戒律とは「三帰五戒(さんきごかい)」のことです。三帰とは、仏(仏さまそのもの)・法(仏の教え)・僧(仏の教えの実行集団)に帰依することです。また、五戒とは、「生き物を殺さない・盗まない・みだらなことをしない・嘘をつかない・酒を飲まない」ことを守るという戒律です。

つまり、本来は生きているうちに、この戒律をすべて守ったものに対し与えられる資格が戒名といえます。超難関試験を突破して獲得した資格のようなものです。

ただ、この戒律を生前にすべて守るのは至難の技です。それゆえ現代では、「死後の名前」をさすようになっています。これは、戒名を授けられることによって初めて死者は、「戒律を守ったものとして認められ、無事に成仏することができる」という捉え方がされるからです。立派な功績を残した人へ、死後に与えられる勲章のようなイメージです。

また、この戒名にはランクがあります。生前の菩提寺への寄付金や寄与などの貢献度や、葬儀の時に支払うお布施の金額によって、より位の高い名前がもらえます。相場は、20~30万円から数百万円です。美空ひばりさんは三千万円だったといわれています。「地獄の沙汰も金次第」といわれる所以です。

なお、一般的には「戒名」という人が多いですが、浄土真宗では「法名(ほうみょう)」といい、日蓮宗では「法号」といいます。

位牌を作って戒名をつける必要はあるか?

戒名は自分でつけてもよい?

このように戒名は、いわば名誉的・勲章的な意味合いを持ちます。お坊さんから仏弟子として認められた証です。「これであなたも悟りを開いて無事に浄土へ成仏できますよ」という、あの世行きのチケットを手に入れたようなイメージです。

それにしても戒名代が高額すぎる、と思っている人が多いのも現実です。こうした中、近年では(2010年ころから)、戒名を自分で付ける人も出てきています。戒名には、宗派ごとに一定の決め方のルールがあるので、自分でつけようと思えば誰でもできるのです。

ネットショップのアマゾンで「戒名の付け方」等で検索すると、数冊の書籍が出てきます。これらを参考に、自分で戒名を決めることもできます。自分で決めるので戒名料は無料です。

戒名の構成

戒名は概ね以下の様な基本構成になっています。上から順に、

①院号3字(〇〇院)
②道号2字(△△)
③法号2字(□□、いわゆる狭義の戒名・法名のこと)
④位号2字(居士、信士など)

です。ただ院号がない場合も多く、そうした場合は、「道号2字+法号2字+位号2字」という構成になります。それぞれの内容は、以下のようになります。

①院号
元々は、檀家として寺院に貢献した人だけに与えられる称号です。たとえば「寺院改修にあたり多額の寄付をした」とかです。したがって、多くの一般人には院号は通常用いません。

②道号
故人の趣味・性格・業績・生前名などを表す字を使用します。

③法号
いわゆる戒名・法名と呼ばれる部分です。一般には、俗名・生前名から一文字とって付ける場合が多いです。

④位号
仏教徒としてのランクを表します。上から順に、男性なら
大居士(だいこじ)、居士(こじ)、信士(しんじ)

女性なら
清大姉(せいだいし)、大姉(だいし)、信女(しんにょ)

となります。「社長、部長、一般社員」のようなイメージです。なお、よく位牌に書かれてある戒名の一番上にある最初の判読不能な文字(梵字)や空、「新帰元」あるいは、戒名の一番下に書いてある「位」や「霊位」は戒名には含まれません。

戒名の実際の構成例

たとえば、私の父の戒名は「義岳寛誠信士霊位」です。宗派は曹洞宗です。この基本構成を見ると、

①院号はなし
②道号が「義岳」
③法号が「寛誠」
④位号「信士」

となっています。

【実際の構成例】

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道号には、1字目に生前名から1字引用されています。また、2字目に実字、つまり実際に目に見えるもの、自然の情景などを使用します。父の場合「岳」です。また、狭義の戒名である法号には、2字目に清字つまり、眼に見えない抽象的な意味の漢字です。父の場合、「誠」です。生前は誠実であったということでしょうか。

また、院号がなく最後が「信士」となっているので、寺院への貢献度は小さかったのでしょう。戒名ランクは一番下です。

ちなみに、戒名は禅宗(曹洞宗と臨済宗)から始まりました。実際は、宗派ごとに戒名の付け方は異なっていますが、曹洞宗、臨済宗、天台宗、真言宗は基本的に戒名のつけ方が共通しています。この4つの宗派は、もっとも一般的な戒名の構成になります。

宗派ごとに、このようなルールを知っていれば、自分で戒名を付けることは難しくありません。

戒名を付ける必要はあるか?

また、先祖や故人を忍びただ供養をするだけなら、あえて位牌を作り戒名を付ける必要はないかもしれません。寺院やお坊さんとの関係がだんだんと希薄になってきた現代では、あまり気にする必要がなくなってきています。檀家関係が崩れてきているからです。

ただ、寺院に支払う戒名料はあくまでもお布施です。戒名料という名目ではありますが、実際は寺院の存続を成立させるための寄付行為になります。したがって、戒名料と思えば高額と感じますが、寺院への寄付と割り切ればすばらしい善行になります。

【戒名料は寺院へのお布施=寄付です】

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さて、戒名はいらないが、やはり供養をする対象物がほしいという人もいます。供養をする対象物=形やモノがほしいなら、位牌を作ることも必要でしょう。ただ、戒名を付けずに位牌に生前名をそのまま記入するだけでよいかもしれません。戒名ではなく俗名のままでも、立派に日々の供養はできると思います。形より気持ちの問題です。

むしろ、高額・高ランクで立派な戒名を付けても、日々供養せずほったらかしにしているよりははるかによいです。私たちも、従来のようにお坊さんのいう通りになるのではなく、一度自分の頭で戒名について考え、いろいろな選択をする時代になっているのかもしれません。

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