高齢社会化により身寄りのない人や孤独死などの事例が増えてきています。
また、核家族化や子供の減少、さらには地域活動に積極的に参加しない人が増えてきているため、従来の葬儀の形にこだわらずに、簡単に葬儀を済ませたい人も多くなってきました。
そういった中、コストカットに特化した「直葬(ちょくそう)」「火葬式(かそうしき)」が注目されています。以下では、通夜や告別式をせず、火葬のみを行う直葬(火葬式)の費用相場について、そのメリットやデメリット、一般葬や家族葬との違いを踏まえ解説します。
直葬(火葬式)とは?一般葬や家族葬との違い
直葬とは?
直葬とは、お通夜、告別式、初七日などの儀式を行わず、すぐに火葬場へ直行し、近親者だけで火葬のみを執り行う葬儀形態の事をいいます。葬儀会社やプランにもよりますが、故人とのお別れに必要最低限のものだけを揃えて行われます。
たとえば、遺体を安置する時に、家族葬や一般葬では通常祭壇を組みますが、直葬は棺のみで祭壇を組まないことが多いです。
また、火葬の際、お坊さんによる読経を行なう場合を火葬式といい、読経を行わずそのまま火葬する場合を直葬といいます。
一般葬との違い
一般葬とは、家族・親族以外にも故人と生前ご縁のあった仕事関係の方、友人・知人、近所の方など一般の方も幅広くお呼びするお葬式の形態です。
祭壇も華やかで、それなりの立場にあった故人を見送るのにふさわしい、いわゆる立派なお葬式になります。
また、一般葬は一度に多くの関係者に参列いただけるので、葬儀後などに弔問客を個別対応する負担が軽減できるのも特徴です。
家族葬との違い
また、家族葬は、一般葬よりも小さな規模で行われ、家族・親族や生前故人とごく親しかった友人・知人だけをお呼びするこじんまりとしたお葬式の形態です。
このように、家族葬は一般的な葬儀に比べて参列者が少ないので、多数の参列者に気を使う必要や手間もなく、遺族の気持ちの負担や金銭的な負担を軽くする事ができます。
ただ、家族葬はケースバイケースで、規模も大小さまざまです。たとえば、こじんまりとした家族葬をしたいと思っていても、近所付き合いの濃い地域に住んでいた場合など、なかなかそうはいきません。
近所の方の参列がとても多く、どちらかといえば一般葬に近い家族葬になることもあります。
また、あえて参列をお断りして、本当に家族だけで葬儀を行う場合もあります。このように、家族葬は、遺族や故人の意思を尊重して、オーダーメイド感覚で葬式を執り行う事ができます。
一方、直葬や火葬式は家族葬よりもさらに規模が小さくなります。ごくごく近い親族または関係者だけで、火葬のみかあるいは、火葬とお坊さんの読経だけでお見送りをします。
お通夜や告別式をしないので、通常は家族か関係者以外の参列者はいません。
直葬のメリット、デメリット
直葬のメリット
直葬のメリットはなんといっても一般葬に比べて費用が圧倒的に安いことです。これはコストカットに特化して作られた葬儀プランだからこそできる事です。
直葬は、お通夜や告別式をしないので追加費用がかかる心配もほとんどありません。
たとえば、一般葬や家族葬の場合、お通夜・告別式での参列者に会葬礼状やお礼の品を用意したり、通夜振る舞いや告別式後の親族の食事会などの費用が追加でかかったりします。
そのため、実際は葬儀屋のホームページやパンフレットに記載されている最低金額より、終わってみればけっこう高くついたというケースもあります。
こういった現実を背景に、「〇〇人までなら同一価格」と、変動費込みでやってくれる業者も増えてきました。
私の親族の場合は、一般葬でしたが葬儀社にまず予算を伝えて、その中で変動費も踏まえて見積もりしてもらいました。
また、菩提寺との付き合いがわずらわしい場合も、直葬はいわゆる密葬になるので、世間体をほとんど気にすることがありません。
お坊さんを呼ばずにそのまま火葬したり、気軽に菩提寺とは違うお坊さんを呼んだりすることもできるのがメリットの1つです。
ただ、お坊さんを呼ぶ場合は、純粋な直葬の費用に加えてお坊さんへのお布施費用がかかるので、葬儀費用は少し割増になります。
また、親子であっても故人との人間関係が悪かった場合も直葬は利用しやすいです。費用をかけて立派で見栄えのする葬式を行なう理由がないからです。
さらに、故人と縁が遠いのに、他に身内がいなくて仕方なく自分が葬式を執り行わなくてはならなくなったという場合も、直葬は優先的に選ばれるプランになります。
直葬のデメリット
デメリットは、周りの方にお知らせしないで葬儀をするので、後日、故人が亡くなった事を知り連絡を入れてくる方の対応を、そのたびにしなくてはなりません。
また、お通夜や告別式という儀式を経ずに、順番が来たらすぐに火葬場に向かう事になるので、ゆっくりと故人とお別れをする時間が取れません。
故人と最期の時をゆっくり過ごす事ができないことが大きなデメリットになります。
直葬を利用する人はどんな人?
直葬を利用する人の多くは、身寄りがいない人、生活保護を受けている人、またはそれに準じた生活をしている人などです。
ただ、そうではない平均的な生活を送っている人でも直葬を利用する人が増えてきました。その理由は、やはり経済的なことです。
昔は、地域で協力して葬式を行なっていました。お金もかかるし気も使いますが、香典を近所の方より頂くことで、葬儀費用の大半を実質みんなで負担し合っていました。
しかし、最近は近所づきあいが希薄になり核家族化が進みました。香典返しや近所の人との付き合いが煩わしいため、通夜や告別式の参列者からの香典をお断りする事が増えてきたのです。
そうなると当然、家族が葬儀代を全額負担しなくてはなりません。できるだけ葬儀費用を抑えたいと考えるのも無理はありません。そうした理由で、直葬や火葬式を選ぶ人も増えてきています。
葬儀に対する価値観も多様になり、個性が求められるようになってきたように思います。
また、たとえ故人に息子や娘がいても、親子関係が非常に悪いなど人間関係が希薄な場合も、お葬式を行うことすら面倒という人もいます。
ただ、火葬だけはしないと仕方がないので、できるだけお金のかからない直葬が真っ先に選択されます。お坊さんの読経もいらないとなれば、お布施費用も不要になり、経済的なメリットはとても大きいからです。
直葬の費用相場;一般葬や家族葬との費用比較
このように直葬の最大のメリットは費用の安さです。業者にもよりますが、枕飾りやお位牌もない一番簡易的なプランでは最低13万円くらいからあります。
しかし、現実的には、生前故人との関係が劣悪だったり、親戚関係が遠すぎたりする場合を除けば、白木の位牌や遺影写真くらいは欲しいと思うのが普通です。これらを考慮すると、通常は20万円程度は見ておきたいところです。
さらに、先祖代々のお墓の菩提寺があるならお坊さんも呼んであげたくなるでしょう。そうなると葬儀代とは別にお坊さんのお布施も必要になりますので、実質合計20万円から30万円程度は必要だと考えた方がよいでしょう。
一方、家族葬ではだいたい葬儀社への支払いだけで30〜50万円くらいの準備が必要です。
祭壇を花で華やかにしたり、料理代や参列者へのお礼の品を含めたりすると、最大100万円程度かかる事もあるので注意が必要です。また、一般葬は200万円くらいから必要になります。
ちなみに、実際に家族葬専門の葬儀屋に依頼したケースを以下に紹介します。
本当にお金がないからと、花も祭壇も全部削って最低価格の14万円程でやってもらいましたが、通夜、告別式に司会やリビングのような遺族控え室まで付けてくれました。
通夜や告別式後の遺族の食事は持ち込みOKだったので食費は実費でした。
また同じ家族葬でも、昔からある葬儀社に頼んだケースでは、式場は狭いけれど家族葬にしてはとても豪華な花祭壇、司会、お通夜、告別式、通夜の参列者用のお弁当や告別式後の仕出し弁当も含めて総額150万円程度かかりました。
このように、同じ葬儀形態でも内容や交渉次第で費用はピンきりですので、注意したいところです。
直葬で失敗しないための3つのポイント
ポイント1、直葬は大きな葬儀社は不向き
一般葬がメインの、互助会があるような名の通った大きな葬儀社に直葬を依頼するのは不向きかもしれません。大きな葬儀社に葬儀費用を抑えるようなことはあまり期待してはいけません。
そういうところほど蓋を開けてみないとわからない不明瞭な会計なところが多いからです。色々とオプションを追加され、食事の持ち込みも不可なところもあります。結局高くついた、ということになりかねないからです。
直葬を依頼する場合は、家族葬専門業者に相談するほうが無難です。
ポイント2、葬儀後に弔問客の対応をする覚悟が必要
直葬や火葬式では、お通夜・告別式をしないので、あとで亡くなった事を知った故人ゆかりの人々が仏壇に手を合わせたいと訪れる場合が多いです。
精神的に弱っていたり疲れていたりする遺族、弔問客に個別対応するのは思った以上に大変です。直葬や火葬式では、こういった覚悟が必要です。
ポイント3、故人とゆっくりお別れができない
葬儀屋によっては、火葬の時にしか故人の顔を見られない事もあります。必ず葬儀社に事前に確認してください。覚悟できていなければのちのち後悔することになります。
また、直葬や火葬式では、お通夜や告別式がないため、故人とゆっくりお別れをすることができません。このこともあらかじめ理解した上で葬儀社に依頼してください。
まとめ
だんだんと家族葬専門の葬儀屋が増えてきて、時代に合わせた直葬プランなども含め、明瞭会計になってきました。
ただ、直葬や火葬式の料金は安いですが、お花や祭壇がない本当にサッパリとしすぎるぐらいの棺周りになります。これだけは覚悟しておく必要があるでしょう。
また、しっかり事前の下調べをし、お葬式の規模と相場を知っておきましょう。葬儀業者の言いなりになることなく、葬儀の後で後悔しないように事前準備をすることをおすすめします。
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